第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
ロンは運転席、ハリーは助手席に腰掛ける。
そしてロンはアクセルを踏み込むと、猛スピードで車を発進させた。
車はスピードを上げたまま森の中へと突っ込んでいく。
「大丈夫かい?」
「大丈夫じゃないわ……。ロン、あなたは大丈夫?……ロン?」
ロンに声をかけるけれど彼は答えない。
恐怖のあまりに声が出せないのかもしれないと思いながら、後部座席で吠え続けるファングを撫でた。
暫く走り続けていれば車は急停止した。
外を見ればハグリッドの小屋が見えて、禁じられた森を出れたことに安堵する。
「……はああ」
息を吐き出したいれば、ハリーが後部座席の扉を開けていた。
すると、ファングは尻尾を丸めてから小屋へと走っていってしまった。
「ありがとう、車。おかげで助かったわ」
「本当にそうだよ。ありがとう」
私とハリーは助けてくれた車を撫でてやる。
すると車はエンジンを鳴らしながらも、森の中へとバックしていきやがて姿が消えた。
私とハリーロンは、透明マントを被りながらハグリッドの小屋へと戻った。
ファングは自身の寝床で震えていて、それが可哀想で体を撫でてやる。
「蜘蛛の跡をつけろだって!ハグリッドを許さないぞ。僕たち、生きているのが不思議だよ」
ロンは怒っていた。
確かにハグリッドの言う通りにして、蜘蛛に襲われて危うく殺されかけていたから怒るのも無理はない。
「きっと、アラゴグなら自分の友達を傷つけないと思ったんだよ」
「私もそう思うわ」
「だからハグリッドってだめなんだ!怪物はどうしたって怪物なのに、みんなが、怪物を悪者にしてしまったんだと考えてる。そのつけがどつなったか!アズカバンの独房だ!」
「ロン、ちょっとは落ち着きなさいよ。ほら、座って深呼吸して」
ロンは震えだしながらも、私の言う通りに椅子に腰掛けてから深呼吸をする。
「僕たちをあんなところに追いやって、いったい何の意味があった?何がわかった?教えてもらいたいよ」
「ハグリッドが『秘密の部屋』を開けたんじゃないってことだ」
ハリーは透明マントを私とロンにかけてから、歩くように促す。
「ハグリッドは無実だった」
「そうね、それだけわかったんだから良いとしましょうよ」
「良くないよ……!」
ふんっとロンは鼻を鳴らしながらも歩き出した。