第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
「城に住むその物は、わしら蜘蛛の仲間が何よりも恐れる、太古の生き物だ。その怪物が、城の中を動き回っている気配を感じた時、わしを外に出してくれと、ハグリッドにどんなに必死に頼んだか、よく覚えている」
「いったいその生き物は?」
ハリーの言葉と同時にまたハサミが鳴る。
すると蜘蛛がさっきより詰め寄ってきたのを感じて、私はハリーの傍に寄った。
「わしらはその生き物の話をしない!」
苛立つように怖がっているかのように、アラゴグは激しくそう言った。
「わしらはその名前さえ口にしない!ハグリッドに何度も聞かれたが、わしはその恐ろしい生き物の名前を、けっしてハグリッドに教えはしなかった」
アラゴグが狂ったように言うと、また更に蜘蛛たちが詰め寄ってくる。
私はそれを感じで背筋に冷や汗を流しながら、ハリーのローブを引っ張った。
「ハリー、これ以上は追求しない方がいいわ」
「うん……分かってるよ」
アラゴグは話をしたのに疲れているような感じだ。
ゆっくりゆっくりと、その大きくて長い脚を動かしながら巣へと戻っていく。
「それじゃ、僕たちは帰ります」
「帰る?それはなるまい……」
「え?」
「でも、でも……」
「わしの命令で、娘や息子たちはハグリッドを傷つけはしない。しかし、わしらのまっただ中に、進んでのこのこ迷い込んできた新鮮な肉を、お預けにはできまい。さらば、ハグリッドの友人たちよ」
冷や汗が尋常じゃないぐらいに流れていた。
このままでは殺されるとわかった私は、ローブから杖を取り出してから叫んだ。
「ヴォラーテ アセンデリ(舞い上がれ)!」
呪文を唱えた瞬間、周りにいた蜘蛛が舞い上がり吹き飛ばされていく。
その時、高らかな長い音と共に眩い光が辺りを強く照らした。
「あれは……アーサーおじさんの車だわ!」
私たちの元に来たのは、傷だらけのアーサーおじさんの車だった。
車が救世主だと私は思ってから、また集まりだした蜘蛛へと呪文を唱える。
「ヴェンタス(吹き飛べ)!」
蜘蛛は吹き飛んでいき、周りに蜘蛛が居なくなる。
車は蜘蛛を薙ぎ倒していき、私たちの目の前に止まるとドアが開かれた。
「ハリー、ロン!乗るわよ!」
「わかった!ロンはファングを乗せて!」
ロンはファングを後部座席に乗せて、私も急いで後部座席へと乗り込んだ。