第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
ふと、ロンを見れば彼は青ざめた表情をしていた。
「ロン?」
声をかけた途端だった。
カシャカシャという音と共に、私の体を何かが鷲掴みにして持ち上げていたのだ。
よく見ればハリーも同じように何かに掴まれていて、私たちは宙吊りになっている。
「なに……!?」
もがきながら逃げようとするが、私の身体を掴んでいるなにかは離してくれない。
次の瞬間、私の体は何者かに暗い木立の中に運び込まれてしまった。
逆さ吊りのまま、何が私の体を捕まえているのだろうかと目を凝らしていれば恐怖で叫びそうになる。
6本の恐ろしいぐらいに長い、毛むくじゃらの足が突き進んでいて、2本の足で私の体をがっちと挟んでいる。
(あと2匹、同じ気配がする……!)
ハリーとロンを運んでいる音なのだろうかと思いながら、恐怖で叫びそうでぐっと我慢した。
叫べば悪い方向に行きそうで、なんとか我慢する。
(怖い、怖い……!)
すると、真っ暗か暗闇が少しだけ明るくなり、地面を覆う木の葉の上に蜘蛛がうじゃうじゃいるのが見えた。
「……蜘蛛っ……!?」
蜘蛛でも小さな蜘蛛じゃない。
大きな巨大な蜘蛛が私たちを運んでいるのが見えて、体温が冷めていくのが分かる。
他の巨大蜘蛛が獲物を見て興奮し、ハサミをガチャガチャとさせている。
すると巨大蜘蛛がハサミをはなして、私たちを地面へと落とした。
隣にハリーとロン、ファングもドサッと音を鳴らして落とされる。
「アラゴグ!アラゴグ!」
蜘蛛は話せるようで、とある名前を叫びながら呼んだ。
小型の象ぐらいの大きさもある蜘蛛がゆらりと現れる。
胴体お脚を覆う黒い毛に白いものが混じっていて、ハサミの着いた恐ろしい頭に、8つの白濁した目がある。
盲目の巨大な蜘蛛が私たちの目の前にいた。
「何の用だ?」
「人間です」
「ハグリッドか?」
「知らない人間です」
「殺せ。眠っていたのに……」
背中に冷や汗が流れるのがわかった。
その時、ハリーがアラゴグという蜘蛛に叫んだ。
「僕たち、ハグリッドの友達です!」
すると、カシャカシャと窪地の中の巨大な蜘蛛がハサミを一斉に鳴らす。
「ハグリッドは1度もこの窪地に人をよこしたことはない」
「ハグリッドが大変なんです。それで、僕たちが来たんです」
「大変?しかし、なぜおまえを寄越した?」