第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
ハリーは杖の明かりをロンに向けて『どうする?』と訊ねた。
「ここまで来てしまったんだもの」
その言葉を聞き、私とハリーは頷いてから歩き出した。
森の茂みの中に入り込んでから歩くけれども、木の枝や切り株がある為に早くは動けない。
私たちは何度か立ち止まっては蜘蛛の群れを確認して、それから歩くを繰り返していた。
もう歩き出して30分は経っているだろうと思った時、ファングが吠えた。
「なんだ!?」
「向こうで何かが動いてる。シーッ……何か大きいものだ」
「何かしら……」
耳を済ませたら、何かが木の枝を追って進んできているのが聞こえた。
それに対してファングが吠えている。
「もうだめだ。もうだめ、もうだめ、ダメ」
「うるさいわよ、ロン……!」
「シーッ!君の声が聞こえてしまう」
ロンを静かにさせようとするけれども、ロンは叫ぶ。
「僕の声?とっくに聞こえているよ。ファングの声が!」
闇の中で何かゴロゴロと言っている。
そう思った時、その音が消えた。
「……変や音が消えたわね」
「何をしているんだろう?」
「飛びかかる準備だろう」
私たちは恐怖で足がすくんでいた。
「行っちゃったのかな?」
「さあ?」
すると、突然右の方に閃光が光り、私たちは思わず目を覆ってから身をすくめた。
ファングがキャンと鳴いた声がか聞こえたと思えば、ロンが大声で叫んだ。
「ハリー!アリアネ!僕たちの車だ!」
「え?」
「車……?」
「行こう!」
走り出すロンを追いかければ開けた場所に出た。
そこにはアーサーおじさんが所有している、あの車があり誰も乗っていないけれど動いていた。
「こいつ、ずっとここにいたんだ!ご覧よ。森の中で野生化しちゃってる……」
「こんなに傷だらけになって……。ロン、貴方良かったわね、車を見つけられて。でも、あの音は車の音だったのね……違う物かと思ったわ」
「本当だよ!僕たち、こいつが襲ってくると思ったのに!」
ロンは車に近寄ると優しく叩いた。
「おまえはどこかに行っちゃったのかって、ずっと気にしてたよ!」
「あ、蜘蛛を見失っちゃった」
ハリーの言葉を聞いて、私たちは辺りを見渡せば蜘蛛の姿がなかった。
どうやらハリーの言う通りに蜘蛛を見失ってしまったらしい。
「さあ、探しに行かなくちゃ」
「早く見つけれたらいいのだけれど……」