第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
私たちは透明マントを被るとグリフィンドールの談話室を抜け出してから、月明かりに照らされている校庭に踏み出した。
その時、ロンがボソボソと言葉を零し始めた。
「ウン、そうだ。森まで行っても、跡をつけられるものが見つからないかもしれない。あのクモは、森なんかにいってなかったかもしれない。だいたいそっちの方向に向かって移動していたように見えたことは確かだけど、でも……」
ロンの言葉はだんだん小さくなっていき、そんな彼に私はため息を吐き出した。
「しっかりしなさいよ、ロン。そんな弱気になってどうするの。ハーマイオニーを助けたくないの?」
「助けたいさ……!でもクモが……クモがぁ」
「情けないわね……!」
なんて言い争いをしていれば、ハグリッドの小屋に到着していた。
小屋の扉を開ければ、ファングが狂ったように尻尾を振り続けて鳴いていた。
「よしよし、ファング。ご主人様がいないから寂しいわよね」
頭を撫でてあげれば、ファングは嬉しそうに鳴く。
ハリーとロンは糖蜜ヌガーを取り出すと、それをファングを与えた。
犬に糖蜜ヌガーっていいのかしらと思いながらも、とりあえずファングの頭を撫でて続ける。
ハリーは透明マントをハグリッドのテーブルに置いてから、外へと出た。
私もまた外へと出てから、ファングへと振り返るとハリーがファングに呼びかける。
「ファング、おいで。散歩に行くよ」
「おいで、ファング。お散歩よ」
腿を叩いたり、手を叩けばファングは嬉しげに小屋から出てきた。
そして私とハリーは杖を取り出すと、呪文を唱える。
「「ルーモス(光よ)!」」
杖の先に小さな明かりが灯り、辺りを小さくだけれども照らしてくれた。
「いい考えだ。僕もつければいいんだけど、でも、僕のは、爆発したりするかもしれないし……」
ロンがそう言っている時、私は草むらではぐれ蜘蛛が2匹居ることに気がついた。
隣にいるハリーの肩を叩けば、ハリーは『いた』と小さく呟いてから、ロンの肩を叩く。
「オーケー。いいよ。行こう」
「覚悟を決めたのね、ロン」
「もうこうなれば覚悟も決めなきゃやってられないよ」
私たちはファングを連れて森の中へと足を踏み入れた。
杖の光を頼りに、そしてはぐれ蜘蛛を頼りにしてから私たちは跡を追っていく。
(だけど、どうしてハグリッドは蜘蛛を追えなんて言ったのかしら……)