第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
「えーと、ほら、あの森には狼男がいるんじゃなかったかな?」
「あら、ロン。もしかして怖いの?」
「こ、怖くないさ……!ただ危険じゃないかっていう話で……」
ロンは杖を指でくるくると回していたが、その顔色はあまりよくない。
多分怖いんだと思いながら、私たちは1番後ろの席に腰掛けた。
「あそこにはいい生き物もいるよ。ケンタウルスも大丈夫だし、一角獣も」
「危険だけじゃないわ、大丈夫よロン」
なんとかロンを宥めていれば、陽気なロックハートが教室に入ってきた。
他の先生方は深刻な表情をしているというのに、何故この男はこんなにも陽気なのだろうかと唖然としてしまう。
「さあ、さあ。なぜそんな湿っぽい顔ばかりそろってるのですか?」
「呆れるわ……」
私の言葉にロンは頷いていた。
周りも呆れた表情を浮かべているのに、ロックハートはそれを気にしていない。
「みなさん、まだ気が付かないのですか?危険は去ったのです!」
「いったい誰がそう言ったんですか?」
ディーンの言葉にロックハートはにっこりとする。
「なかなか元気があってよろしい。魔法大臣は100%有罪の確信なくして、ハグリッドを連行したりしませんよ」
「しますとも」
ロンは大きな声でそう言った。
「自慢するつもりはありませんが、ハグリッドの逮捕については、私はウィーズリー君よりいささか、詳しいですよ」
そんなロックハートにロンがなにか言おうとして、私とハリーはロンの足に蹴りを入れた。
「ロン、貴方ね、言葉には気をつけなさい」
「僕たち、あの場にはいなかったんだ。いいね?」
「いいわね、ロン」
ロンは不満そうにしながらも口を閉ざした。
だけどロンが不満そうにするのも私にも分かる。
ハグリッドは犯人ではないし、まだ解決もしていないのに何故こうも清々しい顔をしていられるのか分からない。
(腹が立つわね)
本の角で思いっきり殴ってやりたい。
そう思っていれば、ハリーから走り書きを渡された。
そこには『今夜決行しよう』と書かれていて、私は小さくハリーへと頷いた。
「ロンに渡して」
私はロンへと走り書きを渡す。
するとロンも何かを決心したのか、ハリーと私へと頷いて見せた。
グリフィンドールの談話室から人が居なくなるのにかなり時間がかかった。
人が居なくなったのは12時頃であり、すっかり深夜である。