第9章 トム・リドル【秘密の部屋】
「これこれ、マルフォイ。ダンブルドア先生は、理事たちに停職させられただけだ。まもなく復職なさると思う」
「さあ、どうでしょうね。先生が立候補なさるなら、父を支持投票すると思います。僕が、父にスネイプ先生がこの学校で最高の先生だと言いますから」
マルフォイとセブの薄く笑う表情に嫌気がさした。
するとマルフォイは、笑いながら言葉を続ける。
「『穢れた血』の連中が、まだ荷物をまとめていないのにまっく驚くねぇ」
本当に大鍋を投げつけてやろうかしら。
そう思いながら私は大鍋をかき混ぜてから、いつも隣にいるハーマイオニーが居ないことに寂しく感じていた。
「次のは死ぬ。金貨で5ガリオン賭けてもいい。グレンジャーじゃなかったのは残念だ……」
その時、私は勢いよく立ち上がったが終業のベルが鳴ったのと私が立ち上がった音が重なった。
そして私はマルフォイに目掛けて大鍋を持ち上げて投げつけようとしたが、ハリーとディーンに止められる。
隣ではロンがマルフォイに近づこうとして、同じようにハリーとディーンに止められていた。
「やらせてくれ」
「今のは絶対に許さないわ。絶対に」
私とロンはもう許せなかった。
マルフォイの息の根を止めてやってもいいと思うぐらいには。
「かまうもんか。杖なんかいらない。素手出やっつけてやる」
「離してちょうだい、ハリー、ディーン」
「絶対にダメだ!」
ハリーに大鍋を取り上げられた時だった。
「急ぎたまえ。『薬草学』のクラスに引率していかねばならん」
セブが不機嫌たっぷりにそう言ったので、私は大鍋を置いてからマルフォイを睨みつけた。
そして彼が私の近くを通った瞬間、私は足を出してからマルフォイの足を引っ掛ける。
「な、何をするんだフリート!」
「あら、ちょっと足が当たったのよ。ごめんなさいね、転けて無様な姿を晒さなくて良かったわね」
「わざと引っ掛けたのだろう!」
「その証拠は何処かしら?証拠を見つけてから言って欲しいわね」
マルフォイは顔を真っ赤にしていたけれど、私はそんなマルフォイを無視してからロンのローブを引っ張る。
今にでもマルフォイに噛み付いていきそうだから。
そしてマルフォイは何か悪態をつきながらも魔法薬の地下牢から出ていった。
「ロン、落ち着きなさい。あなたが停学か退学になればハーマイオニーが悲しむわよ」
「……わかったよ」