第8章 重大で秘密な日記【秘密の部屋】
ハリーが拾おうとした時、ロンが慌てて止めた。
「なんだい?」
「気は確かか?危険かもしれないのに」
「危険?よせよ。なんでこんなのが危険なんだい?」
「見かけによらないんだ。魔法省が没収した本の中には、パパが話してくれたんだけど、目を焼いてしまう本があるんだって。それから『魔法使いソネット(14行詩)』を読んだ人はみんな、死ぬまでバカバカしい詩の口調でしか喋れなくなったり」
ロンの言葉にハリーはそれを『もういいよ、わかったよ』と止めた。
だけど確かに床に落ちている本は、何やら得体の知れない感じがする。
「不気味だけど……」
「うん。だけど、見てないと、どんな本かわからないだろう」
ハリーは本を拾い上げると開く。
その中身は日記であり、表紙の文字は消えかけているけれど50年前ぐらいのものだ。
「とても古い日記だわ……50年前のものなんて存在していたのね」
最初のページに名前が書いてあった。
「T・M・リドル……」
名前を口に出して読んだ。
インクが滲んでいるけれども、はっきりと読めた名前。
するとロンが『あ……』と声をあげた。
「ちょっと待ってよ。この名前、知ってる……T・M・リドル。50年前、学校から『特別功労賞』をもらったんだ」
「どうしてそんな事まで知ってるの?」
「ロン、あなたこの人の事知っているの?」
「だって、処罰を受けた時、フィルチに50回以上もこいつの盾を磨かされたんだ」
ロンは恨みがましく呟いた。
「ナメクジのゲップを引っ掛けちゃった、あの盾だよ。名前のところについたあのネトネトを1時間も磨いてりゃ、いやでも名前を覚えるさ」
「ハリー、他のページも捲ってちょうだい」
「わかった」
ハリーは濡れているページを剥がすように捲る。
だけどそこには何も書かれていなくて、真っ白なページだった。
「何も書かれてないわね……真っ白だわ」
「うん。この人、日記に何も書かなかったんだ」
「誰かさんは、どうしてもこれをトイレに流してしまいたかったんだろう……」
ハリーは裏表紙を見てから呟く。
「この人、マグル出身に違いない。ボグゾール通りで日記を買ってるんだから……」
「そうだね、君が持ってても役に立ちそうしないよ。マートルの鼻に命中すれば50点」
ロンはそう呟いたけれど、ハリーはそれを投げずにポケットに入れていた。