第8章 重大で秘密な日記【秘密の部屋】
階段を駆け上がってかは、身を隠して様子を覗き見る。
フィルチはヒステリックな声を上げながら、何かをしていた。
「……また余計な仕事ができた!一晩中モップをかけるなんて。これでもまだ働き足りんとでも言うのか。たくさんだ。堪忍袋の緒が切れた。ダンブルドアのところにいくぞ……」
フィルチの足音がだんだんと小さくなった。
私たちは廊下の曲がり角から顔を出してから、様子を覗いて見る。
廊下の半分をおびただしい水で水浸しになっている。
「水浸しだわ……」
水は嘆きのマートルが居るトレイのドアから漏れだしているのがわかった。
トイレからは嘆きのマートルの泣き叫ぶ声が聞こえてくる。
「マートルにいったい何があったんだろう?」
「行ってみよう」
「そうね」
ローブが濡れないように踝までたくしあげてから、私たちはびしょ濡れの廊下を歩いた。
ドアを開ければ、マートルはいつも以上に大きな声で大泣きしている。
どこにいるのだろうかと、マートルの姿を探せば彼女は便器の中に隠れていた。
便器からは大量の水が溢れていて、床や壁がびしょびしょに濡れている。
「どうしたの?マートル」
「そんなに泣いてどうしたのよ……」
「誰なの?また何か、私に投げつけに来たの?」
「どうして僕たちが君に何かを投げつけたりすると思うの?」
「私に聞かないでよ!」
マートルは叫ぶと大量の水をこぼしながらも姿を見せた。
「わたし、ここで誰にも迷惑かけずに過ごしているのに、わたしに本を投げつけておもしろがる人がいるのよ……」
「だけど、何かを君にぶつけても、痛くないだろう?君の体を通り抜けていくだけじゃないの?」
ハリーの言う通りだ。
だが、投げつけられたことが嫌だったのかもしれない。
「さあ、マートルに本をぶっつけよう!大丈夫ら、あいつは感じないんだから!腹に命中すれば10点!頭を通り抜ければ50点!そうだ、ハ、ハ、ハ!なんて愉快なゲームだ。どこが愉快だっていうのよ!」
「いったい誰が投げつけたの?」
「知らないわ……U字溝のところに座って、死について考えていたの。そしたら頭のてっぺんを通って、落ちてきたわ。そこにあるわ。わたし、流し出してやった」
マートルが指さす先には、小さくて薄い本が落ちていた。
ボロボロになっている黒い表紙がびしょ濡れになっている。