第8章 重大で秘密な日記【秘密の部屋】
こそこそ、ひそひそと囁かれる声に居心地の悪さを感じてしまう。
耳を塞ぎたくなっていれば、とある声がしてきて誰かに肩を抱かれた。
「やあ、アリアネ」
「やあ、俺たちのお姫様。パーセルマウスだって聞いたが、君はサラザール・スリザリンの子孫なのかい?」
その声は、フレッドとジョージのもの。
フレッドの言葉に、私は思わず叫んでしまった。
「違うわ!私はサラザール・スリザリンの子孫じゃないわ!フリート家の子孫よ!!」
すると2人はニッコリと微笑んだ。
「そんなの知ってるさ」
「なんたって、フリート家は1000年前から続いている旧い家なんだからな!アリアネがサラザール・スリザリンの子孫じゃないのは明白だ」
ざわりと辺りがざわつく。
するとフレッドは私の肩を抱きながらも、周りを見てニヤついていた。
「それに、フリート家の人間はパーセルマウスを研究していたって話もある。それでフリート家の数人は、パーセルタングを練習して話せるような人もいたと言うし?アリアネが話せたっておかしい話じゃない」
「それも分からずにコソコソと話すのは、面白くはないなあ」
2人の言葉に周りは気まずい表情を浮かべていた。
そしてコソコソと私を見て話す人間はいなくて、私は思わず泣きそうになる。
じわりと瞳が涙で滲むのが分かり、慌てて目を擦った。
「コラコラ、アリアネ。目を擦るなよ、赤くなって可愛い顔が台無しだ」
フレッドはそう言って、私の手を取る。
顔を近づけて来て、私の視界はフレッドの顔いっぱいになってしまう。
赤毛の綺麗な髪の毛とソバカスの肌がよく見える。
チュッ……というリップ音が聞こえた。
その音にぽかんとしていれば、フレッドは私の右目に唇を近づけてキスをする。
「なっ、なっ……何してるのよ!!馬鹿フレッド!!」
バチン!という音が響き、私の手のひらにじわりと痛みが広がる。
フレッドの頬を平手打ちすれば、辺りに痛い音が響き、隣にいたジョージが『わぁお』と呟いた。
「いっ、てぇ……!相変わらず手が早いなあ」
「何するのよ……!!」
「おかげで悲しい気持ちは綺麗さっぱり消えただろう!良かった良かった」
「良くないわ!」
私が叫ぶとフレッドは叩かれた頬を撫でながら、私に背を向けて笑う。
「君が元気になるよう、糖蜜飴を取ってくるぜ。そこで待ってろよ」