第7章 穢れた血に壁の文字【秘密の部屋】
「ドビーめは覚えております。『名前を呼んではいけないあの人』が権力の頂点にあった時の事でございます!屋敷しもべ妖精のわたくしどもは、害虫のように扱われたのでございます」
ドビーは枕カバーで涙を拭う。
そして『もちろん、ドビーめはいまでもそうでもございます』と認める。
そんな扱いわされていたのは知らなくて私は驚愕しながらも、ドビーが可哀想になってしまう。
「でも、貴方様たちが『名前を呼んではいけないあの人』に打ち勝ったからというもの、私くどものような者にとって、生活は全体によくなったのでございます。ハリー・ポッターとアリアネ・イリアス・フリートが生き残った。闇の帝王の力は打ち砕かれた。それは新しい夜明けでございました」
「私は、ヴォ……あの人に打ち勝ってはいないわ」
「いいえ!貴方様がいたからですよ!貴方様がいたから、ハリー・ポッターは生きていた。貴方様がいたから、『名前を呼んではいけないあの人』はハリー・ポッターを殺せなかったのですから!」
ドビーの言葉に、私はキョトンとする。
私がいたからというのはどういう意味なのだろうかと。
だけどドビーは説明することなく、話を続けた。
「暗闇の日に終わりはないと思っていたわたくしどもにとりまして、ハリー・ポッターは希望の道標のように輝いたのでございます……。アリアネ・イリアス・フリートはその道標の命を助けたのでございます。それなのに、ホグワーツで恐ろしいことがおきろうとしている。もう起こっているのかもしれません。ですから、ドビーめはハリー・ポッターとアリアネ・イリアス・フリートをここに留ませるわけにはいかないのです。歴史が繰り返されようとしているのですから。またしても『秘密の部屋』が開かれたのですから」
「秘密の部屋……!?」
私の言葉にドビーはハッと恐怖で凍りついたように身体を固める。
しばらくすると身体を動かしたかと思えば、ベッドの脇机にあったハリーの水差しを掴んで、自分の頭をぶつけ始めた。
「ドビーは悪い子、とっても悪い子」
「ドビー、辞めなさい。痛いでしょう、そんなことわしたら……」
やんわりとそれを辞めさせると、ドビーは『ああ、なんてお優しい方なんでしょう!』と何故か感激しながらもハリーのベッドに戻った。