第7章 穢れた血に壁の文字【秘密の部屋】
喚くマートルをなんとか落ち着かせようとして、女子2人はワタワタとしてしまう。
泣かせたらとっても大変なことになるからだ。
「あの夜、このあたりで誰か見なかった?」
「そんなこと、気にしていられなかったわ。ピーブズがあんまりひどいものだから、わたし、ここに入り込んで自殺しようとしたの。そしたら、当然だけど、急に思い出したの。わたしって、わたしって」
「もう死んでた」
ロンの一言がマートルに突き刺さり、マートルは悲劇的なすすり泣きをしながら空中を飛び上がったりして便器の中に飛び込んだ。
飛び込んだ瞬間、水しぶきがあがりそれを避けたアリアネはロンの頭を殴る。
アリアネは『もう死んでるでしょう』と言いそうになったのを我慢したというのに、ロンはしれっと言ったのだ。
おかげで話をまだ聞きたかったのにマートルは便器の中に隠れてしまった。
「ロンのせいよ」
「僕のせいなのかよ……!」
「うるさいわよ、ロン。まったく。でも、あれでもマートルにしては機嫌がいいほうなのよ……さあ、出ましょうか」
マートルを残して4人はトイレから出た。
その時、階段のてっぺんから大きな声が聞こえたのだ。
「ロン!」
その声に驚いていれば、そこにはパーシーが立っていて衝撃を受けた表情を浮かべている。
「そこは女子トイレだ!君たち男子が、いったい何を?」
「ちょっと探してただけだよ。ほら、手掛かりをね」
「そうよ、パーシー。決して変な意味でロンたちは入ったわけじゃないのよ」
「そこから、とっとと離れるんだ」
アリアネがなんとか庇おうとするが、パーシーはそんなのお構い無しだった。
大股でこちらに近づくと、その場から腕を振って4人を追い立てはじめたのである。
「人が見たらどう思うかわからないのか?みんなが夕食の席に着いているのに、またここに戻ってくるなんて……」
「何で僕たちがここにいちゃいけないんだよ。いいかい。僕たち、あの猫に指1本触れてないんだぞ!」
「僕もジニーにそう言ってやったよ?だけど、あの子は、それでも君たちが退学処分になると思ってる。あんなに心を痛めて、目を泣き腫らしてるジニーを見るの初めてだ。少しはあの子のことも考えてやれ。1年生はみんな、この事件で神経をすり減らしてるんだ」