第7章 穢れた血に壁の文字【秘密の部屋】
「あの声のこと、僕とアリアネはみんなに話したほうがよかったと思う?」
「いや。誰にも聞こえない声が聞こえるのは、魔法界でも狂気の始まりだって思われる」
「そうね、話さない方がいいわ。だって私とハリーだけが聞こえる声っておかしいじゃない。誰も信用はしてくれないわ……」
ただ2人だけに聞こえた声。
そんなこと誰も信用してくれないと思っていれば、ハリーはロンへと視線を向けた。
「君は僕とアリアネのこと信じてくれるよね?」
「もちろん、信じるさ。だけど君も、薄気味悪いって思うだろう……」
「確かに……そうね」
「確かに薄気味悪いよ。何もかも気味の悪いことだらけだ。壁になんて書いてあった?『部屋は開かれたり』……これ、どういう意味なんだろう?」
壁の文字を思い出す。
あそこの文字はいったいどんな意味があるのだろうかと、私たちは考え込んだ。
するとロンが何かを思い出したような表情になる。
「ちょっと待って。なんだか思い出しそう。誰かがそんな話をしてくれたことがある。ビルだったかもしれない。ホグワーツの秘密の部屋のことだ」
「それに、出来損ないこスクイブっていったい何?」
ハリーの言葉にロンは可笑しそうに笑う。
「あのね、本当はおかしいことじゃないんだけど。でも、それがフィルチだったもんで……。スクイブっていうのはね、魔法使いの家に生まれたのに魔力を持ってない人のことなんだ。マグルこ家に生まれた魔法使いの逆かな」
「でもフィルチがスクイブとは知らなかったわね……。スクイブって凄く珍しいのよ」
「そうなのかい?」
「そうだよ。めったにいない。フィルチがクイックスペル・コースで魔法の勉強しようとしてるなら、きっとスクイブだと思うな。これで色んな謎が解けた。たとえば、どうして彼は生徒たちをあんなに憎んでいるか、なんてね」
ロンは満足そうに笑いながら『妬ましいんだ』と言った。
私もなるほどと頷いてからフィルチがあんなに冷たくて、憎んでいる理由が分かり納得する。
魔法が使えないから魔法が使える子供たちが憎くてたまらない。
なんとも哀れな人と思っていれば、時計の鐘が鳴り響いて時間を知らせた。
「午前0時だ」
「もうそんな時間なのね。色々ありすぎて、時間が経つのを忘れちゃっていたわ」
私は鐘の音を聴きながらそう呟いた。