第7章 穢れた血に壁の文字【秘密の部屋】
「え、なに……、今の声……」
ハリー達の声じゃない。
冷たくて身体まで冷えていくような感覚がする声が聞こえてきた。
「……アリアネ、今の声聞こえた?」
「え、ええ。ハリーも聞こえたの?」
「さっきの声だよ!ロックハートで僕が聞いたのは!」
「え?」
目を見開かせながら叫ぶハリーは、通路の隅から隅までを見つめていた。
私は先程の声はなんだったのかと思いながら辺りを見渡すけれど、声の出処が分からない。
「ハリー、いったい何を?」
「またあの声なんだ。ちょっと黙ってて」
すると、また声が聞こえてくる。
「……腹が減ったぞー……こんな長ーい間……」
「また!?」
「ほら、聞こえる!アリアネも聞こえただろう?」
「聞こえたわ。この声、何処から……」
「……殺してやる……殺す時が来た……」
一体この声は何処からしているのだろうか。
私は困惑しながらハリーを見れば、彼も声の出処を探している。
ある事に気がついた。
最初に聞こえた声よりも、さっき聞こえた声は微かなものだったことを。
「声が、移動してる……?」
「うん、移動してるんだ。こっちだ」
ハリーは叫ぶと階段を駆け上がりはじめ、私も追いかけていくとハーマイオニーたちも追いかけてくる。
大理石の階段を全力で駆け上がり2階へと出れば、ロンが声をかけてきた。
「ハリー、アリアネ。いったい僕たちなにを……」
「シーッ!」
「ロン、静かに。聞こえないから……」
静かにさせると、また声は微かだけれども聞こえてきた。
「……血の臭いがする……血の臭いがするぞ!」
「誰か殺すつもりだ!」
「早く行かなきゃ!ハリー、上の階よ!聞こえてくるの」
「分かってる!」
私とハリーはハーマイオニーたちを置いて3階へと駆け上がっていく。
そして3階に到着してから私とハリーはくまなく声が聞こえるところを探していた。
ハーマイオニーとロンは息をせき切りながら着いてきて、4人で角を曲がって廊下を出る。
「ハリー、アリアネ。いったいこれはどいうことだい?」
「声が聞こえるのよ。冷たくて凍えるような声が」
「僕には何も聞こえなかった」
その時、ハーマイオニーが叫んだ。
「見て!」
ハーマイオニーが指さす方向を私たちは一斉に見る。
壁には何かが光っていて、窓の壁の間の高いところに文字が書かれていた。