第7章 穢れた血に壁の文字【秘密の部屋】
そして足を踏み込もうとした時であった。
「Ms.フリート。少しよろしいかね」
「……セブ?」
聞き慣れた声が私を呼び止めた。
振り返ればセブが怪訝そうに私たちを見ていて、その目はハリーへと向けられる。
「Ms.フリートをお借りしますぞ、ポッター。来なさい、Ms.フリート」
「え、あ……。ハリー、首無しニックに謝っておいてちょうだい!」
「あ、ああ!分かったよ」
何故呼ばれたのかよく分からないが、私はとりあえずセブについて行くことにした。
セブの背中を追いかけながら歩いていれば、彼は中庭近くま出来て足の動きを緩やかにしていく。
大広間からは賑やかな声が聞こえた。
今頃、ハロウィーンパーティをしているのかなと思っていればセブが足を止める。
「どうしたの、セブ。私に何か用でもあるの?」
「また、あの3人といるとお前は何かしら巻き込まれると思いましてな。吾輩の胃に穴を開ける前に呼び止めたまで」
「……首無しニックのパーティに行くだけよ」
「では、理由を変えよう。お前はハロウィーンの日は賑やかでいるのは嫌いであろう」
その言葉に私は目を見開かせた。
確かにその通りだけれど、ハロウィーンの日を賑やかでいるのが嫌いというのは誰でも話したことがない。
それなのに何故、セブは知っているのだろうと驚いてしまった。
「何年、お前を見守ってきたと思う」
「……そう、だね。ずっと見守ってくれていたものね」
「ふん……。吾輩はダンブルドアに呼ばれているから行くが、賑やかな場所にいたくなかったら地下牢に来てもいい。それでは」
「あ、その前に!」
私は直ぐに行ってしまいそうなセブを呼び止めた。
「Trick or Treat」
右手を差し出しながら、ハロウィーンのお決まりの言葉を言う。
セブはその言葉を聞いた瞬間眉間に皺を寄せていたけれど、ローブのポケットをまさぐってから何かを取り出した。
「これしかないが文句は言うな。それでは」
私の手のひらにコロンと何かを置いてからセブは歩いて行ってしまった。
その黒い背中を見送りながら、私は手のひらを見てから少し笑う。
「私の好きな糖蜜飴じゃない……」
1つ包み紙を広げてから、飴を口の中へと放り投げた。
甘くて優しい味が口の中に広がり、それを楽しんでいると耳元でとある声が囁く。