第6章 ギルデロイ・ロックハート【秘密の部屋】
その夜、また夢を見た。
『シリウス、シリウス。またアリアネを抱っこしてるのかい?そろそろウィリアスに怒られるよ。俺の娘を返せって』
『いいだろう、長時間抱っこしていても。可愛いアリアネを抱っこしたいんだよ。それよりも、あいつ陰湿なあの野郎にアリアネを抱っこさせたらしいじゃないか』
『一応、決別したと言っても幼なじみだからね』
『幼なじみはジェームズだけでいいだろう。なあ、アリアネ。君が抱っこされるべきなのは、両親と俺とリーマスとジェームズにリリーとワームテールだけで充分だ』
暖かくて逞しい腕に抱っこされていた夢を夢を見た。
すごく落ち着く腕と、優しい声に話しかけられていて、とても緩やかだったのを覚えている。
「·····シリウス」
目を覚ました私は、その名前を呟いた。
モリーおばさんとアーサーおじさんには忘れなさいと言われたけれど、私はどうしても忘れることが出来ない。
「シリウス・ブラック·····いったい、誰なのかしら」
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夏休みは呆気なく終わりを告げる。
モリーおばさんは夏休み最後の夜だからと、豪華な夕食を魔法で作ってくれた。
私の大好物であるチェリーパイも作ってくれたり、糖蜜のケーキもあって、私たちは大興奮しながらも食べた。
フレッドとジョージは夜の締めくくりだからと、『ドクター・フィリバスターの長々花火』を仕掛けて台所いっぱいに赤や青の星が埋めつくした。
そして最後に暖かいココアをマグカップいっぱいに飲んで、私たちは眠りにつく。
(明日はホグワーツだわ·····セブに、会えるのね)
セブはこの夏休み、私に会いには来なかった。
夏休み前に本当は『大嫌い』と言ったことを謝りたかったけれど、その時間がなかったので会えたら言いたかったのに。
「ホグワーツに行ったら、謝らなきゃ·····」
翌朝、出かけるまでにかなりの時間がかかった。
私は早起きして荷物をまとめて、モリーおばさんと朝食を作っていたけれど、皆はやることがたくさん。
「ソックスと羽根ぺんがもっとたくさんあったはずよ!」
モリーおばさんはご機嫌ななめだし、皆は手に食べかけのトースト持ったままだったり、半分パジャマのままで階段のあちこちにぶつかり合っていた。