第1章 ホグワーツ魔法魔術学校【賢者の石】
ハグリッドの大きな声を合図に、ボート船団は一斉に動き始める。
船から湖を覗きこめば、鏡のように私を映し出していた。
「頭、下げぇー!」
先頭の何艘かが崖下に到着すると、ハグリッドが大きな声をかける。
私たちが頭を一斉に下げると、ボート船団は蔦のカーテンをくぐりぬけて、その陰に隠れているポッカリと開いた崖の入り口へと進む。
そして、城の真下と思われる暗いトンネルをくぐれば、地下の船着場に到着した。
到着すると全員が目を輝かせながら岩と小岩の上に降り立つ。
「ほらアリアネ、危ないから気をつけなよ」
「ありがとう、ロン。貴方、エスコートなんて何処で覚えたのかしら?」
先に船から降りたロンは、私へと手を差し出してくれていて、私は微笑みながら彼の手を取る。
するとロンは気恥ずかしそうに顔を赤く染めていた。
「ビルに、女性のエスコートはしろって言われたんだよ……」
「そうだったのね。その調子で女性にエスコートしてたら、モテるわよ。多分ね」
「多分ってなんだよ……」
むっと頬を不貞腐れて膨らませるロンを笑いながら歩いていれば、ハグリッドがヒキガエルを手にしてからネビルの元に向かっていた。
「ホイ、おまえさん!これ、おまえのヒキガエルかい?」
「トレバー!」
「どうやら、ヒキガエルが見つかったみたいね」
「良かったわね、ネビル。もう逃がさないようにしなさい」
ハーマイオニーは少し上から目線でネビルに言い聞かせていた。
弟でもいるのかしらと思いながらも、私たちはランプを持ったハグリッドの後を追いかける。
ゴツゴツした岩道、湿っている草むら。
まるで本で読んだ魔王のお城に向かってるみたいと、わくわくが止まらない。
暫く歩いていけば、巨大な樫の木の扉が目の前に広がっていた。
「みんな、いるか?おまえさん、ちゃんとヒキガエル持っとるな?」
ハグリッドは確認をしてから、大きな拳で城の門を三回叩いた。
すると扉がゆっくりと開き、扉の向こう側にエメラルド色のローブを身にまとった背の高い黒髪の女性がいる。
厳格そうな顔つきを見て、ロンが苦手そうと私は小さく笑ってしまった。
そして同時に、きっとこの人に逆らう事はしないほうがいいわねと本能で見抜く。
「マクゴナガル教授、イッチ年生の皆さんです」
「ご苦労様、ハグリッド。ここからは私が預かりましょう」