第1章 ホグワーツ魔法魔術学校【賢者の石】
私以外、フリート家の人間は死んでしまった。
私だけが生き残っているものだから、近寄る魔法使いたちはいくらでもいる。
その血を欲しているのだ……フリート家の血を。
嫌な事を思い出しそうになったとき、車内にそれを掻き消すように声が響き渡る。
「あと五分でホグワーツに到着します。荷物は別に学校に届けますので、車内に置いていってください」
「いよいよね、ホグワーツ!」
ずっと楽しみだったホグワーツ魔法魔術学校。
あまりにも楽しみで、さっきまで思い浮かんでいた嫌な記憶が消し飛んでしまった。
そして私たちは慌てて広げていたお菓子をポケットやらトランクに詰め込んでいき、人で溢れかえった通路に飛び込む。
「ハリー、ロン、緊張してるの?顔色が悪いわ」
「ちょっとね」
「もう、僕は吐きそうだよ……」
ロンのセリフを、もし双子たちに聞かれてたら揶揄われそうだなと小さく笑った。
そして汽車は完全に速度を落とすと、停車する。
押し合いになりながは列車の戸を開けて、外に出ると小さな暗いプラットホームに出る。
「少し寒いわね……」
冷たい空気に身震いさせていれば、私たちの頭上にランプが近づいてくる。
そして懐かしい声が聞こえてきた。
「イッチ(一)年生!イッチ年生はこっち!お、ハリー、アリアネ、元気か?」
「ハグリッド!」
「さあ、ついてこいよ。あとイッチ年生はいないか?足元に気をつけろ。いいか!イッチ年生、ついてこい!」
ハグリッドは大きな声で言いながら、私たちを案内していく。
滑ったりつまずいたりしながらも、険しい狭い道を歩いていった。
「みんな、ホグワーツがまもなく見えるぞ。この角を曲がったらだ」
そして、ホグワーツ魔法魔術学校が見えた。
大きな黒い湖の向こう側、岸に高い山がそびえ、てっぺんには大きな城が見える。
大きな塔に、小さな塔、キラキラと輝く窓に星空が浮かびあがっている。
「これが、ホグワーツ魔法魔術学校……」
思わず、ほお……と息が出た。
「四人ずつボートに乗って!アリアネは身体が小さいからな。五人乗っても平気だな。よし、ハリーたちと乗れ」
ハグリッドに背中を押され、私はハリーとロンにネビルとハーマイオニーが乗るボートに乗った。
「みんな乗ったか?よーし、では、進めえ!」