第6章 ギルデロイ・ロックハート【秘密の部屋】
水曜日の朝。
私たちはダイアゴン横丁に向かう為に、朝早くに起きてからモリーおばさんお手製のベーコン・サンドイッチを食べてからコートを着込む。
後片付けを終えたモリーおばさんは、暖炉の上か植木鉢を取ると中を覗き込む。
「アーサー、だいぶ少なくなってるわ」
「今日、買い足しておかないとね·····。さーて、お客様からどうぞ!ハリー、お先にどうぞ」
おばさんはハリーへと植木鉢を差し出す。
「な、何をすればいいの?」
「ああ、そうね。ハリーはやり方をしらないのよ」
「そうだった。ハリーは煙突飛行粉(フルーパウダー)を使ったことがないんだ。ごめん、ハリー、僕、忘れてた」
その言葉にアーサーおじさんは少しだけ驚いた顔をしていた。
「1度も?じゃあ、去年は、どうやってダイアゴン横丁まで学用品を買いにいったのかね?」
「地下鉄に乗りました」
「ほう?エスカペーターとかがあるのかね?それはどうやって」
マグルの世界に興味津々のアーサーおじさんは、根掘り葉掘りとハリーに聞こうとした。
だけどそれをモリーおばさんが制止する。
「アーサー、その話はあとにして。ハリー、煙突飛行って、それよりずっと速いのよ。だけど、1度も使ったことがないとはねぇ」
「ハリーは大丈夫と思うわ、モリーおばさん」
「アリアネの言う通りだ。ハリーは大丈夫だよ、ママ。ハリー、俺たちの使ってみろよ」
フレッドは鉢からフルーパウダーをひとつまみすると、暖炉へとそれをふりかける。
すると炎がエメナルドに代わり、フレッドはその中に入ると『ダイアゴン横丁』と叫び消えた。
「あんな感じでするのよ、ハリー」
「·····なるほど」
「ハリー、はっきり発音しないとだめよ。それに、間違いなく正しい火格子から出る事ね」
「正しいなんですか?」
次はジョージがフルーパウダーを振ってから、火の中へと消えていく。
それを眺めていればハリーは不安げにそう聞いていた。
「あのね、魔法使いの暖炉といっても、本当にいろいろあるのよ。ね?でもはっきりと発音さえすれば」
「ハリーは大丈夫だよ、モリー。そんなうるさく言わなくとも」
「でも、あなた。ハリーが迷子になったら、叔父様と叔母様になんと申し開きできます?」
その言葉にハリーは少しだけ笑っていた。
笑うと言っても苦笑を浮かべているような感じ。