第6章 ギルデロイ・ロックハート【秘密の部屋】
「ねぇアリアネ。ハリーたちは?」
「庭よ。庭小人を駆除しているわ」
「さあアリアネ。糖蜜パイを作りましょうか」
「はあい!」
好物の糖蜜パイを作るのは私の楽しみでもある。
台所に並んでから、モリーおばさんは魔法で作らずに手作業で作る準備を始めた。
私が魔法を使っちゃいけないからと、手作業で作らせてくれる。
「さあ、まずは生地作りからね。アリアネ、バターを出してきてちょうだい。薄力粉、砂糖、塩·····」
用意した材料で生地を作り始める。
サラサラとした生地に卵をいれて、生地を固めていき平らにしていく。
そうやってタルト生地を作り、糖蜜パイの中身を作ろうとしていた時だ。
バタン·····という音が聞こえた。
振り返れば、そこにはアーサーおじさんがいて少し疲れた顔をしながら歩いてきていた。
「パパ、おかえりなさい」
「ああ、ただいま。ジニー」
「おかえりなさい、アーサー」
「おかえりなさい。アーサーおじさん」
「たたいま、モリー、アリアネ」
アーサーおじさんが台所の椅子に腰掛けていれば、庭にいたハリーたちも戻ってくる。
そしてアーサーおじさんの周りに座った。
「ひどい夜だったよ。9件も抜き打ち調査したよ。9件もだぞ!マンダンガス・フレッチャーのやつめ、私がちょっと後ろを向いたすきに呪いをかけようとし·····」
お茶を1口飲んだアーサーおじさんは、ため息をはいた。
「パパ、何かおもしろいもの見つけた?」
「私が押収したのはせいぜい、縮む鍵数個と、噛み付くヤカンが1個だけだった。かなりすごいものも1つあったが、私の管轄じゃなかった。モートレイクが引っ張られて、なにやらひどく奇妙なイタチのことで尋問を受けることになったが、ありゃ、実験的呪文委員会の管轄だ。やれやれ·····」
アーサーおじさんの話を聞きながら、私は糖蜜パイを黙々と作っていた。
フィリングを作り始めて、甘くいい匂いが家の中に広がっていく。
「鍵なんか縮むようにして、なんになるの?」
「マグルをからかう餌だよ。マグルに鍵を売って、いざ鍵を使う時には縮んで鍵が見つからないようにしてしまうんだ。·····もちろん、犯人を挙げることは至極難しい。マグルが鍵を縮んだなんて誰も認めないし、連中は鍵を失くしたって言い張るんだ」
アーサーおじさんは何度目かのため息を吐いた。