第6章 ギルデロイ・ロックハート【秘密の部屋】
「不正使用の車で国の空の半分も飛んでくるなんて·····誰かに見られてもおかしくないでしょう」
杖をおばさんが振ると、流しの中で勝手にお皿洗いが始まってガチャガチャという音が響く。
「ママ、曇り空だったよ!」
「物を食べてる時はおしゃべりしないこと!」
「ママ、連中はハリーを餓死させるとこだったんだよ!」
「おまえもお黙り!」
フレッドとジョージは一喝されてしまう。
そんな姿を見ながら、私は焼けたパンにバターを塗ってからハリーのお皿へと乗せた。
冷蔵庫からマーマレードといちごジャムを取り出してからテーブルに置けば、ハリーたちはパンにたっぷりのジャムを塗り出す。
「でもあれは虐待だわ。今度あったら一発殴ってやりたいぐらいよ」
「辞めなさい、アリアネ。貴方は本当に殴りそうだから」
「殴ってもいいぐらいだよ、ママ」
「お黙り、ロン!」
なんて話している時だった。
ネグリジェ姿のジニーが台所に現れて、ハリーを見てから小さな悲鳴をあげる。
「キャッ」
「あ·····行っちゃった」
「ジニーだよ、ハリー。妹だ。夏休み中ずっと、君のことばっかり話してたよ」
「あぁ、ハリー、君のサインをほしがるぜ」
フレッドはそう言ってからニヤリとするけれど、モリーおばさんと目が合ってだんまりとする。
それからは誰も一言も喋らずに黙々と食べ続けてから、食べ終わるまで誰も喋らなかった。
沈黙が流れる中、私が最後の1切れのパンを口に放り投げると食べ終えたフレッドがフォークとナイフを起きながら欠伸をする。
「なんだか疲れたぜ。僕、ベッドに行って·····」
「行きませんよ。夜中起きていたのは自分が悪いんです。庭に出て庭小人を駆除しなさい。また手に負えないぐらい増えています」
「ママ、そんな」
「おまえたち2人もです」
ロンとジョージも『ええ!』と言いたげな表情を浮かべた。
「ハリー。あなたは上に行って、お休みなさいな。あのしょうもない車を飛ばせてくれって、あなたが頼んだわけじゃないんですもの。アリアネ、貴方はジニーに朝ごはんを届けてちょうだい。怪我をしたらいけないから、庭小人の駆除はしなくてもいいわ」
「私だってできるわよ、おばさん」
「女の子だから、危ないことはしてはいけません。あとで一緒に糖蜜パイを焼きましょう」
「·····はぁい」