第6章 ギルデロイ・ロックハート【秘密の部屋】
「まあ、ハリー、よく来てくださったわねえ。家に入って、朝食をどうぞ」
モリーおばさんはそう言うと、くるりと身体を向きを変えて家の方へと歩き出した。
私達も一緒に歩き出し、昨夜ぶりの家へと入るのだった。
家の中に入れば、ハリーは物珍しそうに辺りを見渡していた。
魔法使いの家は初めてだろうから、驚いているみたいでその様子にクスッと笑う。
「ハリー、荷物は取り敢えず置いて。朝ごはん食べてから荷物は運びましょう」
「あ、うん」
モリーおばさんは朝食を作る為に小さな台所に立っていた。
流しの脇にあるラジオからは放送が聞こえてくる。
「次は『魔女の時間』です。人気歌手の魔女セレスティナ・ワーベックをお迎えしてお送りします」
放送を聞きながらも、私はモリーおばさんの横に立つ。
「モリーおばさん、手伝うわ」
「ありがとう、アリアネ。パンを焼いてちょうだい。焼けたらバターを塗って、冷蔵庫からジャムを出して」
「はあい」
魔法は使っちゃいけないから、手作業でやる。
この家に来てから、私は居候させてもらっているからとよく手伝いをしていた。
アーサーおじさんやモリーおばさんは『しなくてもいい』『気にしなくてもいい』と言ってくれるけど、やっぱりこのぐらいはしなくては。
「おまえたちときたら、いったい何を考えてるやら」
モリーおばさんはフライパンにソーセージを投げ入れながら、時折ロンたちを睨んでいる。
「こんなこと、絶対思ってもみなかったわ」
そう呟きながら、モリーおばさんは私とハリーへと視線を向けた。
「貴方たちのことは責めていませんよ。アリアネはずっとハリーを心配してたものね。だからこんな行動をしたのでしょう。貴方は他人を思う優しい子ですから」
「ママはアリアネが可愛くて仕方ないんだよ。僕たち、ほとんど男兄弟だから」
ボソリとロンがハリーに呟いたのが聞こえた。
そしておばさんはハリーのお皿に9本もソーセージを滑り込ませている。
「アーサーと2人であなたのこと心配していたの。昨夜に、金曜日までにあなたからロンとアリアネへ返事が来なかったら、わたしたちがあなたを迎えにいこうって話をしていたぐらいよ。でもねえ」
モリーおばさんは次は、目玉焼き3個をハリーのお皿に入れていく。