第6章 ギルデロイ・ロックハート【秘密の部屋】
「いいえ」
「ン、いや。パパは今夜仕事なんだ。僕たちが車を飛ばせたことを、ママが気づかないうちに車庫に戻そうって仕掛けさ」
私たちは黙ってこの車を持ち出している。
きっとモリーおばさんに知られたら、凄く怒られるのだろうなあと苦笑を浮かべた。
「お父さんは、魔法省でどういうお仕事なの?」
「1番つまんないところさ。マグル製品不正使用取締局」
「なに局だって?」
「マグル製品不正使用取締局よ。名前の通りの場所」
「そう、名前通りの場所だ」
「マグルの作ったものに魔法をかけることに関係あるんだ。つまり、それがマグルの店や家庭に戻された時の問題なんだけど。去年なんか、あるおばあさん魔女が死んで、持ってた紅茶セットが古道具屋に売りに出されたんだ。どこかのマグルのおばさんがそれを買って、家に持って帰って、友達にお茶を出そうとしたのさ。そしたら、ひどかったなあ。パパは何週間と残業だったよ」
あの時は今も覚えている。
マグルが魔法族のものを持っているだけで問題でもあるけれど、それを使ってしまったのだから。
アーサーおじさんは、何週間も長い仕事をして残業もしてへとへとになって帰ってきていた。
少しだけやつれていたようにも見えたし、今も『あれは大変だった』と言っている時もある。
「いったい何が起こったの?」
「お茶のポットが爆発して、熱湯をそこいら中に噴き出して、そこにいた男の人なんか砂糖のつまみ道具で鼻をつままれて、病院に担ぎ込まれてさ。パパはてんてこ舞いだったよ。同じ局には、パパともう1人、パーキンズっていう年寄りきりいないんだから。2人して記憶を消す呪文とかいろいろ揉み消し工作だよ……」
「あの時のアーサーおじさん、凄くやつれていたわよね。思い出しただけでも可哀想だったわ」
うんうんとロンが深く頷く。
「だけど、君のパパって·····この車とか·····」
「そうさ。親父さんったら、マグルのことにはなんでも興味津々で、家の納屋なんか、マグルの物がいっぱい詰まってる。親父はみんなバラバラにして、魔法をかけて、また組み立てるのさ。もし親父が自分の家を抜き打ち調査したら、たちまち自分を逮捕しなくちゃ。お袋はそれで気が狂いそうさ」
「大通りが見えたぞ」
ジョージはそう呟きながら、フロントガラスから下を覗き込み、私も窓から下を見下ろしていた。