第1章 ホグワーツ魔法魔術学校【賢者の石】
自分でも驚くぐらいに低い声が出る。
腸が煮えくり返るように、怒りがふつふつと湧き上がる感覚が分かった。
「貴方こそ礼儀がなっていないわね。私とハリーの両親に、ウィーズリー家やハグリッドを馬鹿にしないでくれるかしら?訂正しないのなら、その舌を引き千切ってあなたのお父様に送って差し上げましょうか!!」
「ひいっ!」
首にめり込むぐらいに杖を突きつけていれば、傍ではスキャバーズに噛まれたゴイルがパニックになってぐるぐると身体を回している。
そしてついに、スキャバーズはゴイルの指から離れて窓に叩きつけられてしまう。
「訂正しなくてもいいわ。今すぐ私たちの前から消えなさい!さもないと一生、親に会えないようにするわよ!!」
怒鳴ると、マルフォイたち三人は足早に逃げていった。
情けない後ろ姿を見ながら、私はため息を吐いていればハーマイオニーがこちらにやって来て顔を覗かせる。
「いったい何やってたの?」
「ちょっと、性格悪い虫達を追っ払ってただけよ。ロン、スキャバーズは平気かしら?」
ロンはスキャバーズのしっぽを掴むと、ぶらんと下げながら見せてくる。
「こいつ、ノックアウトされちゃったみたい。ちがう……驚いたなあ……また眠っちゃってるよ」
「驚いたわ……痛くなかったのかしら?にしてもよく眠るわよね、スキャバーズって」
驚いたことにスキャバーズは本当に眠っている。
そんなスキャバーズの顔を指で突きながら、私はトランクに杖を収めた。
「ねえ、ハリー。マルフォイに会ったことあるのかしら?」
「あるよ……」
「そう……」
「僕、あの家族のことを聞いたことがあるよ。『例のあの人』が消えた時、まっ先にこっち側に戻ってきた家族の一つなんだ。魔法をかけられたって言ってたんだって。パパは信じないって言ってた。マルフォイの父親なら、闇の陣営に味方するのに特別な口実はいらなかったろうって」
「ハリー、あのマルフォイには近づかない方がいいわ。あいつらは、私の両親とあなたの両親を殺した……あの人の味方だった人間なんだから」
ぎりっ……と唇を噛み締める。
できれば会いたくなかったけれど、マルフォイも魔法界の人間なのだから、ホグワーツには来るのだ。
すると、ロンは私の背中をさすって怒りを収めようとしてくれる。
そして彼はハーマイオニーの方を振り向いていた。
「何かご用?」