第5章 二つの顔をもつ男【賢者の石】
「ありがとう。僕も楽しみに待っていられるようなものがなくちゃ」
4人で話しながら人の波に押されて、マグルの世界に繋がるゲートへ進んでいく。
歩いていれば何人かがハリーに声をかけてきた。
「ハリー、バイバイ」
「またね。ポッター」
「減点された時は、あんなに無視したりしていたのに」
私は今の状況に呆れていた。
「まあまあ、アリアネ」
「いまだに有名人だね」
「これから帰るところでは違うよ」
改札口を出ると、そこにはモリーおばさんとジニーが立っていた。
するとジニーはハリーを見ると目を輝かせていて、ハリーへと指さしている。
「まあ、彼だわ。ねえ、ママ、見て。ハリー・ポッターよ。ママ、見て、わたし、見えるわ」
「ジニー、お黙り。指さすなんて失礼ですよ」
そしてモリーおばさんは私たちに笑いかけてきた。
「忙しい1年だった?」
「ええ、とても。お菓子とセーター、ありがとうございました。ウィーズリーおばさん」
「まあ、どういたしまして」
「準備はいいか」
楽しげに話していると、それに割って入るような声が聞こえて私は眉を寄せた。
赤い買顔に、口ひげを生やしている中年の男性がたっていて、何故かハリーを睨みつけている。
その中には首が異様に長い女性と、丸々と太った男の子がいた。
「もしかしてあの人たち、ハリーの親戚?」
「そうだよ」
「へえ……そう」
私はゆっくりと歩き出すと、ハリーの叔父という人に笑いかけた。
「初めまして、ハリーの叔父様。私、アリアネ・イリアス・フリートと申します。ハリーとは、親友でして。これからも仲良くしたいと思っています」
「小僧の親友……?」
「ええ。またお会いすることもあるでしょうからその時はどうぞ宜しくお願いします。ハリーに逢いに行く時もあるでしょうから。ハリーが健康体でいると、嬉しいんですが」
にっこりと笑うと、ハリーの叔父は顔を引き攣らせていた。
すると、モリーおばさんがこちらにやって来て私の肩に手をかけながらハリーの叔父に声をかける。
「ハリーのご家族ですね」
「まあ、そうとも言えるでしょう。小僧、さっさとしろ。おまたのたまに一日をつぶすわけにはいかん」
「……ハリーの言った通り、嫌な人ね」