第5章 二つの顔をもつ男【賢者の石】
私とハリーの反応に、ハグリッドはクスッと笑う。
「いんや。これを作るんで、きのうダンブルドア先生が俺に休みをくれた。あの方にクビにされて当然なのに……とにかく、はい、これ」
ハグリッドは私とハリーに小綺麗な皮表紙の本を渡してくれた。
なんだろうと思いながら、ページを捲って私は目を見開かせる。
どのページにも、私と父さんと母さんがいた。
優しい微笑みを浮かべながら、私に手を振ったり笑いかけてくれている写真ばかり。
そしてハリーの方を見れば、彼も同じように写真がいっぱい埋め尽くされいる。
「ハグリッド、これ……」
「あんた達のご両親の学友たちにふくろうを送って、写真を集めたんだ。だっておまえさんたちは、1枚も持っていないし……気に入ったか?」
私は、名付け親に『写真、いるかい?』と言われたことがあった。
でもそれは名付け親のものだし、1枚だけしか持っていないからと遠慮しておいたのだ。
モリーおばさんにも言われたことはある。
だけど、彼女のものを貰うことは遠慮してしまって私は1枚も両親の写真は持っていなかった。
(私の、父さんと母さんの写真……)
ページを撫でながら、じわりと目頭に浮かぶ涙を拭った。
優しい微笑みを浮かべている、父さんと母さんの写真を見ながら……。
ハグリッドが出ていったあと、私とハリーはずっと写真を見ていた。
飽きることはなくて、眺めていればハリーが私の本を覗き込む。
「アリアネは、お母さんに似ているんだね」
「ハリーはお父さん似なのね。よく似ているわ……目は、お母さんに似てる」
「アリアネの瞳は、お父さんとよく似てるよ。2人とも優しそうな人たちだ」
「ハリーのご両親も、凄く優しそうな人たちだわ」
その夜、私とハリーは二人で学年度末パーティーに行った。
マダム・ポンフリーがもう一度、最終診察をするといって離してくれなかったから時間がかなり過ぎてしまっていた。
大広間に入れば、もう広間は人でたくさん。
スリザリンが7年連続で寮対抗杯を獲得したお祝いで、広間にはスリザリンの色であるグリーンとシルバーで埋め尽くされている。
「嫌な色で埋め尽くされているわね」
「同感だよ」
しかも、スリザリンの蛇を描いた巨大な横断幕がハイテーブルの後ろの壁に飾られている。
それを見ながら歩いていれば、突然シーンとなった。