第5章 二つの顔をもつ男【賢者の石】
フレッドは素早くカーテンの中に入ってくると、丸椅子に腰掛けてからカーテンに耳をくっ付けていた。
外から聞こえる声に『うわぁ』という表情になる。
「マクゴナガル先生がいるのか……。まあ、見つからなきゃいっか」
「マダム・ポフリーに見つかるって、どういうことなの?」
「マダム・ポンフリーが、まだ君とハリーの面会は駄目だって言ってるんだよ。でもこっそり入ってきた」
ウィンクをするフレッドに私はため息を吐いた。
そしてもう1人の双子の片割れ、ジョージが居ないことに首を傾げる。
いつも何かをやからす時にはジョージも一緒なのに、今日はいないのだから。
「ジョージは?」
「マダム・ポンフリーを呼んで、時間稼ぎしてもらってる。医務室の外にいるんだよ」
「あら、そうだったのね。で、どうしたの?」
「君が心配だったんだよ。頭、打ったんだろう?」
フレッドは手を伸ばすと、私の頭を撫でる。
痛くならないように優しくしているようで、その手は少しぎこちなく動いていた。
そしてフレッドは痛々しそうに目を細めている。
「痛い?」
「少しはね。マダム・ポンフリーに痛み止めもらっているから、そこまでは痛くないのよ」
「それは良かった。だけど君は相変わらず、無茶をするんだな。僕とジョージと一緒じゃないか」
「え、それは嫌だわ。一緒にされたくない」
「酷い言いようだな……!でも、あんまり無茶はしないでくれよ?心配なんだから」
なんて言うと、フレッドは私の頬にキスをした。
チュッ……という小さなリップ音に目を見開かせながらも、眉を寄せる。
「もう、直ぐに頬にキスしないで」
「それは嫌だね。愛情表現だから。もう片方の頬にもしてやろうか」
「それは、面会が完全に許可されてからにしてくださいな。Mr.ウィーズリー」
勢いよくカーテンが開き、マクゴナガル先生がフレッドの背後に立っていた。
「げっ!!」
「げっ、とはなんですか!マダム・ポンフリーからは面会の許可は降りていないというのに!行きますよ、Mr.ウィーズリー!!」
「アリアネ!ちゃんと許可降りたらまた来るからなー!」
「はいはい、待ってるわね」
フレッドはマクゴナガル先生に首根っこを引っ掴まれながら医務室から出ていった。
そんな姿にクスクスと笑いながらも、私はその日弱い痛みを感じながら眠りにつくのだった。