第5章 二つの顔をもつ男【賢者の石】
「そうじゃ。それがハリーの肌に残っておる。クィレルのように憎しみ、欲望、野望に満ちた者、ヴォルデモートと魂を分け合うような者は、それがために君に触れることができんのじゃ。かくも素晴らしいものによって刻印された君のような者に触れるのは、苦痛でしかなかったのじゃ」
「それじゃあ、ハリーはハリーのお母さんに守られてるんですね。お母さんの愛によって」
「そうじゃよ、アリアネ」
ハリーは愛されていた。
その事を証明するような力であり、素敵だと思いながら私はハリーにほほ笑みかける。
するとハリーも少し微笑んでいた。
死んでもなお、ハリーを守ろうとしている。
ハリーのお母さんはなんて素敵で凄い人なのだろうと尊敬してしまった。
「·····ハリー」
ハリーの目元には涙が浮かんでいた。
するとダンブルドアはわざと彼から視線を逸らすようにして、その瞬間ハリーはシーツで目元を擦った。
「あの『透明マント』は·····誰が僕に送ってくれたか、ご存知ですか?あと、アリアネのネックレスも」
「あ、そうです。このネックレス·····私をクィレルから守ってくれたネックレス。誰が送ってきたか、ダンブルドア先生はご存知ですか?」
「ああ·····透明マントはハリーの父上が、たまたま、わしに預けていかれた。君の、気に入るじゃろうと思ってな。アリアネのネックレスも、君の父上がわしに貸してくれていたんじゃよ。君を守るために作ったものだが、わしにも貸してくれてな。君が持つべきじゃと思って、クリスマスに送ったんじゃよ」
じゃあ、あのクリスマスプレゼントはダンブルドア先生からだったということ。
その事に私は今日何度目かの驚きをまたしてしまい、自身の胸元にあるネックレスに触れた。
「透明マントは便利なものじゃ。ハリーの父上とアリアネの父上がホグワーツに在学中は、二人はもっぱらこれを使って台所に盗み込み、食べ物を失敬したものじゃ」
「父さんも?」
「実はな、二人の父上は幼なじみ同士だったんじゃよ」
私とハリーはお互いの顔を見合わせた。
「それはもう、兄弟のように仲が良かったのぅ」
「あの、そのほかにもお聞きしたいことが·····」
「どんどん聞くがよい」
「クィレルが言うには、スネイプが」
「ハリー、スネイプ先生じゃろう」