第5章 二つの顔をもつ男【賢者の石】
「それはとても美しくて恐ろしいものじゃ。だからこそ注意深く扱わなければなるまい。しかし、答えないほうがいいというはっきりした理由がないかぎり、答えてあげよう。答えられない理由がある時には許して欲しい。もちろん、わしは嘘はつかん」
「ヴォルデモートが母を殺したのは、僕を彼の魔手から守ろうとしたからだと言っていました。でも、そもそもなんで僕を殺したかったんでしょう?」
ハリーの言葉に、私は弾けれるように顔を上げた。
たしかに何故ハリーはヴォルデモートに狙われていたのだろう。
そして私もダンブルドアに聞きたいことがあり、ダンブルドアへと視線を向けた。
何故、両親は死んだのだろう。
どうして私は生き残ったのだろう、そして何故ヴォルデモートは私も殺そうとしたのだろう。
ずっと聞きたくて、聞いたけれど名付け親やモリーおばさんたちは教えてくれなかったこと。
「ダンブルドア先生、私も真実が知りたいです。何故、ハリーは殺そうとされたんですか?何故、私の両親も殺されて私も命をねらわれたんですか?それと、クィレルは私がまた邪魔をしたと言っていました。それは、どういう意味なんでしょうか?」
私とハリーの言葉に、ダンブルドアは困ったようにしていた。
「おお、なんと、二人の最初の質問なのにわしは答えてやることができん。今日は答えられん。いまはだめじゃ。時が来ればわかるじゃろう·····ハリー、アリアネ、いまは忘れるが良い。もう少し大きくなれば·····こんなことは聞きたくないじゃろうが·····その時が来たらわかるじゃろう」
これは、食い下がっても教えてはくれない。
そう確信した私とハリーはそれ以上は聞かなかった。
「でも、どうしてクィレルは僕に触れられなかったんですか」
「君の母上は、君を守るために死んだ。ヴォルデモートに理解できないことがあるとすれば、それは愛じゃ。君の母上の愛情が、その愛の印を君に残してゆくほど強いものだったことに、彼は気づかなかった」
ハリーは稲妻の形をした、額の傷に触れる。
私も一瞬それのことかと思ったけれど、ダンブルドアが否定した。
「傷跡のことではない。目に見える印ではない·····それはどまで深く愛を注いだということが、たとえ愛したその人がいなくなっても、永久に愛されたものを守る力になるのじゃ」
「永久に愛されたものを守る力·····」