第5章 二つの顔をもつ男【賢者の石】
ふと、私は脇のテーブルにお菓子が沢山置かれていることに気が付いた。
しかもよく見れば、私の机にも沢山のお菓子がおかれている。
「君たちの友人や崇拝者からの贈り物だよ」
ダンブルドアはにっこりと笑う。
相変わらず優しく笑う人だなと思いながらも、誰が送ってきたんだろうとお菓子の山を見つめる。
「地下で君たちとクィレルとの間に起きたことは『秘密』でな。秘密ということはつまり学校中が知っているというわけじゃ。君たちの友達のMr.フレッド、Mr.ジョージ・ウィーズリーは、たしか君たちにトレイの便座を送ったのう。君たちが面白がると思ったんじゃろう。だが、マダム・ポンフリーがあまり衛生的ではないといって没収してしまった」
「トイレの便座·····」
またモリーおばさんに怒られる·····私は顔を手で覆っていればダンブルドアが愉快そうに笑っていた。
するとハリーは辺りを見渡しながら聞く。
「僕はここにどのくらいいるんですか?」
「3日間じゃよ。アリアネも3日間ここにいる。Mr.ウィーズリーとMs.グレンジャーは君たちが気が付いたと知ったらほっとするじゃろう。2人ともそれはそれは心配しておった」
「でも先生、『石』は·····」
「君の気持ちをそらすことはできないようだね。よかろう『石』だが、クィレル先生は君から石を取り上げることができなかった。わしがちょうど間に合って、食い止めた。しかし、君は1人で本当によくやった」
「先生があそこに?ハーマイオニーのふくろう便を受け取ったんですね?」
「いや、空中ですれ違ってしまったらしい。ロンドンに着いたとたん、わしがおるべき場所は出発してきた所だったとはっきり気が付いたんじゃ。それでクィレルを君から引き離すのにやっと間に合った·····」
話を聞くかぎり、ハリーはどうやら賢者の石を手に取っていたらしい。
それで恐らくだけれど、クィレルはそれを取り上げようとしてそれをダンブルドアが止めたということなのだろうか。
首を傾げていれば、ハリーが『あとで起きたことを説明するね』と小声で囁いた。
それに私は頷いていると、ダンブルドアが苦笑を浮かべているのに気がつく。
「あの声は、先生だったんですか」
「遅すぎたかと心配したが」
「もう少しで手遅れのところでした。あれ以上長くは『石』を守ることはできなかったと思います·····」