第5章 二つの顔をもつ男【賢者の石】
「ヘレンはな、君が産まれた時に直ぐにわしとマクゴナガル先生に見せに来たんじゃ。それはもう、マクゴナガル先生は孫娘が出来たと言わんばかりに喜んでおった」
「じゃあ、私、赤ちゃんの頃にマクゴナガル先生に会っていたんですね!」
知らなかった事実に、私は凄く驚いてしまった。
マクゴナガル先生が母さんを娘のように思っていたことや、私を見てそんな風に喜んでいたのも。
「そうじゃよ。わしと会っていてね、君はわしの髭を掴んで離さなもんじゃから大変だった」
「·····それは、すみませんでした」
恥ずかしくなりながらも、横を向く。
ダンブルドアと赤ちゃんの頃に会っていたというのは、ハグリッドから聞いてはいた。
だけど、マクゴナガル先生に会っていたことやダンブルドアの髭を掴んで離さなかった話は聞いたことがない。
「あとで、ミネルバとゆっくりと話すといい。そして君は今日はゆっくりと休みなさい。君は3日も意識が無くなっていたのだから」
「3日もですか!?」
「ああ、そうじゃ。だからそうして叫ばずに、ゆっくりと休みなさい」
なんて話している時だった。
ハリーが突然腕を伸ばしていて、私とダンブルドアはそれに少し驚いてしまう。
するとダンブルドアはゆっくりとハリーに近づいた。
「ハリー、こんにちは」
私も慌ててベッドから降りて、頭の痛みに顔を歪ませながらもハリーに近寄った。
「ハリー!」
「アリアネ!先生!先生!『石』!クィレルだったんです。クィレルが『石』を持ってます。先生!早く·····」
「ハリー、落ち着いて!」
「落ち着いて、ハリー、君は少ーし時間がずれとるよ。クィレルは『石』を持っとらん」
「え?賢者の石はどうなって·····」
私が覚えているのは、クィレルが誰か分からない声に命令されてハリーを呼んだこと。
そして私がクィレルに攻撃して、誰かがクィレルに命令して私を殺そうとしたことや、ネックレスが私を守ってくれたことや、投げ飛ばされたところまで。
賢者の石はどうなっているのだろう。
なんて思っていれば、ハリーは驚いた顔をしながらダンブルドアに訊ねる。
「じゃあ誰が?先生、僕·····」
「ハリー、いいから落ち着きなさい。でないとわしがマダム・ポンフリーに追い出されてしまう」
そういえば、医務室にいるんだということを思い出して口を閉ざした。