第5章 二つの顔をもつ男【賢者の石】
死の呪文を唱えられた。
私は死ぬんだと、ここまでなんだと思った時、眩い光が私の身体を包み込む。
「ひっ!?」
その光を見た瞬間、クィレルが怯む。
真っ白な光は強くなると、クィレルを弾き飛ばした。
そして私はその場に倒れ込み、身体を強く地面に叩きつけられる。
「げほっ!!げほっ、ごほっ!!」
急に酸素を取り入れたせいなのと、首を絞められていたせいで咳き込んでしまう。
そして私は自分の胸元が光っているのに気が付いた。
ネックレスが光っている。
あのクリスマスの日に、誰か分からないけれど送ってきてくれていた父さんの形見のネックレス。
どんな魔法からも守ってくれるというネックレスが、眩い白の光を放っていたのだ。
「ねっくれす·····が、ひかっ、てる·····」
父さんが、守ってくれたんだ·····。
そう思っていれば、クィレルが吹き飛ばされたせいなのか痛そうに顔を歪ませながら立ち上がっていた。
「ご主人様が言っていた、あの時もこんな風にフリート、貴様に邪魔をされたと·····魔法が使えないなら!!」
クィレルは私を睨みつけると、こちらへと足早に駆け寄ってきて私の胸ぐらを掴みあげる。
「アリアネ!クィレル、アリアネを離せ!!」
「魔法を使って弾き飛ばされるのなら、この手で殺せばいい!!」
「アリアネー!!」
ハリーが叫んだ瞬間、私はクィレルにより投げ飛ばされていた。
ふわりと身体が浮遊した感覚を覚えた瞬間、私は壁に投げつけられていて頭を強く打つ。
痛い、すごく痛い。
それと同時に意識が徐々に霞んでいくのが分かる。
「アリアネ!!アリアネ!!」
ハリーが叫んでいるのが分かるけれど、返事が出来なくて頭が凄く痛くてたまらない。
痛さと意識が霞むのを感じながら、私はハリーへと手を伸ばした。
だけど、そこで意識が飛んだ。
『逃げろ!!リリー、ヘレン!ハリーとアリアネを連れて逃げるんだ!!』
『辞めて!あの子たち手を出さないで!!』
『逃げろー!!』
『リリー、逃げて!ハリーとアリアネを連れて逃げて!』
誰かの叫び声が聞こえた。
同時に誰かの悲鳴も聞こえて、それが凄く辛くてたまらなくて泣きたくなってしまう。
でも誰の声なのか分からない。
だけど何処かで聞いたことがあるような·····。