第5章 二つの顔をもつ男【賢者の石】
「善と悪じゃなくて、力と力を求めるには弱すぎる者·····」
「そうだ。もちろん私はあの方を何度も失望させてしまったが。だから、あの方は私にとても厳しくしなければならなかった」
突然、クィレルが震え出した。
その光景に私とハリーは驚いてしまい、身を固くさせる。
それに攻撃出来る隙がなくて、私はどうしようかと杖を強く握りしめていた。
「過ちは簡単に許していただけない。グリンゴッツから『石』を盗み出すのにしくじった時は、とてもご立腹だった。私を罰した·····私をもっと間近で見張らないといけないと決心なさった·····」
間近で見張るということは、やっぱりヴォルデモートは近くにいる。
もしかして今も何処かにいるんじゃいかと、私は周りを見渡しながら冷や汗を流す。
怖い、すごく怖い。
もしかしたら、ヴォルデモートが私の両親を殺したあの男が近くにいるんじゃないかと思ったらすごく怖くなってしまう。
「いったいどうなってるんだ·····『石』は鏡の中に埋まっているのか?鏡を割ってみるか?」
私はゆっくりと立ち上がる。
戸惑っている今が、攻撃できるチャンスじゃないのだろうかと思っていた時だった。
「この鏡はどういう仕掛けなんだ?どういう使い方をするんだろう?ご主人様、助けてください!」
クィレルの言葉に、ぞっとするような声が聞こえてきた。
「その子を使うんだ·····その子を使え·····」
声が聞こえると、クィレルがこちらを振り返り、私は慌てて座る。
そしてクィレルはハリーへと声をかけた。
「わかりました·····ポッター、ここへ来い」
「ヴェンタス(吹き飛べ)!」
「な!?」
クィレルがハリーに声をかけた瞬間、私は呪文を唱えてクィレルを吹き飛ばした。
だけれど、クィレルはすぐ様に起き上がると私へと手を伸ばしたのだ。
私の首へと·····。
「おのれ·····!」
「ぅ、ぐっ!」
「アリアネ!!」
ギチッという音が聞こえる。
首を絞められて、息が出来なくて苦しくなっていく。
すると、またあの気味の悪い声が聞こえてきた。
「殺せ·····その小娘を、殺せ」
「はい、ご主人様·····」
「辞めて!辞めろ!!アリアネを殺さないで!!」
杖を振りあげようとしたけれど、クィレルが呪文を唱える方が早かった。
「アバタケダブラ(息絶えよ)!」