第5章 二つの顔をもつ男【賢者の石】
ギチギチに縛られた紐が体を痛くさせる。
するとクィレルは底冷えするような眼差しで、私とハリーを見下ろしていた。
「ポッター、フリート。君たちはいろんなところに首を突っ込みすぎる。生かしてはおけない。ハロウィーンの時もあんなふうに学校中をチョロチョロしおって。『賢者の石』を守っているのが何なのかを見に私が戻った時も、君たちは私を見てしまったかもしれない」
「あなたがトロールを入れたのですか?」
「さよう。私はトロールについては特別な才能がある·····」
あの時、私とハーマイオニーを襲ったトロール。
あれはクィレルが入れたと知った私は目を見開かせてから身体を震わせた。
頬を怪我しただけで済んだけれど、下手していたら私とハーマイオニーは死んでいたかもしれないのだ。
怒りがじわじわと浮かんでくる。
クィレルの冷たく嘲笑っている顔が、すごく腹正しくてたまらない。
「ここに来る前の部屋で、私が倒したトロールを見たね。残念なことに、あの時、皆がトロールを探して走り回っていたのに、私を疑っていたスネイプだけが、まっすぐに4階に来た私の前に立ちはだかった·····私のトロールが君たちを殺し損ねたばかりか、三頭犬はスネイプの足を噛み切りそこねた」
「あなた、セブまで狙っていたの!?」
「邪魔だったからね。さあポッター、フリート大人しく待っておれ。このなかなかおもしろい鏡を調べなくてはならないからな」
その時やっと気が付いた。
クィレルの後ろにあるのが、私とハリーが両親を見た鏡である『みぞの鏡』だということを。
「この鏡が『石』を見つける鍵なのだ」
「·····鍵」
「ダンブルドアなら、こういうものを考えつくだろうと思った·····しかし、彼はいまロンドンだ·····帰ってくるころには、私はとっくに遠くに行ってしまう·····」
「僕とアリアネは、あなたがスネイプと一緒にいるところを見た·····」
「ああ·····」
クィレルは鏡の裏側へと回り込んでいた。
石を探すための鍵を探しているのか、いい加減な返事をしている。
「スネイプは私に目をつけていて、私がどこまで知っているかを確かめようとしていた。初めからずーっと私のことを疑っていた。私を脅そうときたんだ。私にはヴォルデモート卿がついているというのに·····それでも脅せると思っていたのだろうかね」