第5章 二つの顔をもつ男【賢者の石】
ブツブツと何か、独り言を呟いたかと思えば瓶を指さしたりとしている。
私とハリーはそんなハーマイオニーを見ながらも、大人しく黙って待っていた。
「わかったわ。1番小さな瓶が、黒い火を通り抜けて『石』の方へ行かせてくれる」
「この小さな瓶ね」
「2人分ぐらいしかないね。ほんの二口しかないよ」
私たちは瓶の中身を見ながら、お互いに顔を見渡せる。
瓶の中にはほんの少しだけの薬しか入っていなくて、これでは3人では行けない。
「紫の炎をくぐって戻れるようにする薬はどれ?」
「これよ」
ハーマイオニーは1番右端にある丸い瓶を指さし、ハリーは小さく頷いた。
「ハーマイオニー、アリアネ。君たちがそれを飲んでくれ」
「ハリー!?」
「いいから黙って聞いてほしい。戻ってロンと合流してくれ。それから鍵が飛び回っている部屋に行って箒に乗る。そうすれば仕掛け扉もフラッフィーも飛び越えれるからまっすぐふくろう小屋に行って、ヘドウィグをダンブルドアに送ってくれ。彼が必要なんだ。しばらくならスネイプを食い止められるかもしれないけど、やっぱり僕じゃかなわないはずだ」
「でもハリー、もし『例のあの人』がスネイプと一緒にいたらどうするの?」
ハリーは小さく笑いながら、自分の額の傷を指さす。
「そうだな。僕、1度は幸運だった。そうだろう?だから2度目も幸運かもしれない」
ハーマイオニーは唇を震わせていたかと思えば、ハリーに駆け寄って抱きついていた。
それを見た私は目を見開かせながら、オロオロと辺りを見渡してしまう。
「ハーマイオニー!」
「ハリー、あなたって、偉大な魔法使いよ」
「僕、君にはかなわないよ」
「私なんて!本が何よ!頭がいいなんて何よ!もっと大切なものがあるのよ·····友達とか勇気とか·····たた、ハリー、お願い、気をつけてね!」
「まず君たちから飲んで。どの瓶が何の薬か、自信があるんだよね?」
「絶対よ」
ハーマイオニーは列の端にある大きな丸い瓶を飲むと、私へと差し出してきた。
「アリアネも飲んで」
私はハーマイオニーから瓶を受け取らず、黒い炎を通り抜けれるという薬を手にしてそれを1口飲んだ。
すると、ハリーとハーマイオニーは目を見開かせていて、そんな彼らに私は笑ってみせる。
「私、セブを止めたいの。話だって色々聞きたいのよ」