第5章 二つの顔をもつ男【賢者の石】
全身から血の気が引いた気がする。
何度もロンの名前を叫ぶけれど、ロンは返事をしてくれない。
白のクイーンはそんな私の叫びとハーマイオニーの悲鳴を無視してロンを引き摺り、片隅に投げた。
「大丈夫だよアリアネ!ロンは気絶してるだけだ!」
叫ぶ私にハリーが宥めるように叫んだ。
そしてハリーは3つ左に進んでいけば、白駒のキングは自ら王冠を脱いでハリーの足元に投げる。
それは私たちが勝ったという証拠だった。
チェスが左右に分かれて、前方の扉への道を開けてからお辞儀をしてくる。
私たちはロンを振り返ってから扉へと突進して、次の通路を進んだ。
「もしロンが·····」
「大丈夫だよ」
「ハリー·····」
「きっと、大丈夫だよ、ロンは」
ハリーは私たちに言い聞かせるように言うけれど、自分にも言い聞かせているように呟いていた。
「次はなんだと思う?」
「スプラウトはすんだわ。悪魔の罠だった·····鍵に魔法をかけたのはフリットウィックに違いない·····チェスの駒を変身させて命を吹き込んだのはマクゴナガルだし·····とすると、残るはクィレルの呪文とスネイプの·····」
「セブならば、魔法薬学かしら·····クィレルは闇の呪文かもしれないわ」
「ええ、そうかもしれないわ」
次は何があるのか·····私たちは緊張しながら、次の扉に辿り着いていた。
「いいかい?」
「大丈夫よ」
「開けて」
ハリーが扉を開けたのと同時に、むかつくような何とも言えない匂いが私たちを襲う。
顔を顰めながら、ローブを引っ張り鼻を覆うと多少はマシになった。
目をしょぼつかせながら中を見ると、そこには前にトイレで遭遇したトロールよりさらに大きなトロールが倒れていた。
頭のコブは血だらけで、誰かにやられたのかは一目瞭然。
「セブがやったのね」
「いまこんなトロールと戦わなくてよかった」
小山のような足をまたぎながら、私たちは歩いていく。
「さあ行こう、息が詰まりそうだ」
次の扉を開ける。
扉の先には次は何が待っているのだろうと警戒するけれど、恐ろしいものなんてなかった。
部屋の中にはテーブルがある。
その上に形の違う7つの瓶が1列に並んでいて、すぐに誰の罠か分かった。
「スネイプだ」
「セブらしいわね、瓶だなんて·····」
「そうだね。アイツらしい。何をすればいいんだろう」