第5章 二つの顔をもつ男【賢者の石】
4人で頭上を見上げる。
高く飛んでいる鳥を眺めていれば、ハリーが叫んだ。
「鳥じゃないんだ!鍵なんだよ!羽の生えた鍵だ。よく見てごらん。ということは·····」
「鳥を捕まえなきゃいけないわね。でも、どうやって捕まえるの?この数を」
「·····よし。ほら!箒だ!ドアを開ける鍵を捕まえなくちゃいけないんだ!」
「でも何百羽もいるよ!」
私たちの頭上を飛んでいるのは何百羽とも言える、鳥のような鍵。
箒で飛んだとしても、見分けるのはかなり難しいと思っていれば、ロンが扉の鍵を調べていた。
「大きくて昔風の鍵を探すんだ·····たぶん取っ手と同じ銀製だ」
「銀製ね、分かったわ」
私たちは箒を手に取ると地面を蹴り上げ、空中へと飛び上がった。
だけど鍵たちは動くのがすごく早くて、なかなか捕まえることができない。
素早く飛び去ったり、急降下したりと、とにかく捕まえることが出来ないのだ。
それに段々とイライラとしていればハリーが私たちに向かって叫ぶ。
「あれだ!あの大きいやつだ·····そこ、違うよ、そこだよ·····明るいブルーの羽だ·····羽が片方、ひん曲がっている」
「ハリー、あれ!?あの鍵!?」
「そう、それだよ!アリアネ!て、ロン!気をつけて!」
ロンはハリーが指さした方向に猛スピードで行き、危うく天井にぶつかって箒から落ちそうになっていた。
「4人で追い込まなくちゃ!」
曲がった羽から視線を逸らさず、私たちはハリーの指示を聞いた。
「ロン、君は上の方から来て·····ハーマイオニー、君は下にいて降下できないようにしておいてくれ。アリアネ、君は左から来て、僕と挟み撃ちにするように。僕が捕まえてみる。それ、いまだ!」
ハリーの指示通り動くと、鍵は私たちを横切って壁に向かってスピードを上げ始める。
ハリーは前かがみになって、鍵を石壁に押さえつけていた。
そして私たちは思いっきり歓声を上げてしまう。
私たちは大慌てで箒から降りて着地する。
そしてハリーはバタバタと暴れる鍵をしっかりと掴んで扉へと向かって走った。
鍵穴に突っ込んで回すと、扉がガチャリと音を鳴らして開く。
「開いた·····いいかい?」
ハリーの言葉に、私たちは頷いてみせる。
そして扉を引っ張ると、ゆっくりと扉は開いたがその先は真っ暗だった。