第5章 二つの顔をもつ男【賢者の石】
「ハーマイオニー、大丈夫?」
「ええ、大丈夫よアリアネ。ここって、学校の何キロも下に違いないわ」
ハーマイオニーは辺りを見渡してから、冷静に分析するかのようにつぶやく。
そして私も辺りを見渡してから、こんな場所がホグワーツにあるなんてと驚いてしまう。
「この植物のおかげで、ほんとにラッキーだった」
「ラッキーですって!3人とも自分を見てごらんなさいよ!」
「え?·····わっ!?何この植物、絡んできてるわ!」
私たちの下にある植物はまるで生き物のように動き出し、足首に絡みつき始めている。
私は慌てて植物から降りるけれど、ハリーとロンの足にはすでに長いツルが絡んでいた。
私とハーマイオニーだけ、ツルを振り解けていた。
だけどハリーとロンが動けば動くほど、ツルは複雑に絡み始めている。
「動かないで!私、知ってる·····これ、『悪魔の罠』だわ!」
「あぁ。何て名前か知ってるなんて、大いに助かるよ」
「ロン、動いちゃダメよ!」
「ロン、黙ってて!どうやってやっつけるか思い出そうとしてるんだから!アリアネも思い出してちょうだい!」
「ええ!?えっと、なんだっけ·····なんだったかしら」
ブツブツと呟きながら、スプラウト先生が悪魔の罠についてなんて言っていたか思い出そうとする。
「早くして!もう息ができないよ」
「ちょっと待ってちょうだい、ハリー!今、思い出してるから!えっと確か·····暗闇と·····暗闇と」
「『悪魔の罠』、『悪魔の罠』っと·····スプラウト先生は何て言ったっけ?暗闇と湿気を好み·····」
「だったら火をつけて!」
「そうよ、ハリー!火よ!ハーマイオニー、火をつけましょう!」
「そうだわ、それよ·····でも薪がないわ!」
ハーマイオニーはどうしようという風に目を見開かせる。
「気が変になったのか!君はそれでも魔女か!」
「あっ、そうだった!」
ロンの叫び声でハーマイオニーはやっと、自分が魔法が使えることに気がついた。
そして私はそんなハーマイオニーに苦笑を浮かべながらも、杖を急いで取り出して呪文を唱える。
「インセンディオ!」
植物へと杖を向けると火が舞う。
そしてハーマイオニーも何か呪文を唱えてから植物へと火を向けた。
植物は光と温もりを嫌うようで、2人の締めつけを解いた。