第5章 二つの顔をもつ男【賢者の石】
「いやよ!」
「ようし!」
ロンは歯を食いしばって、フラッフィーを起こさないようにと足をまたいだ。
そして屈みながら仕掛け扉の引手を引っ張ってから、中を覗き込んでいた。
「何が見える?」
「誰かいる?」
「何にも……誰も……。真っ暗だ……降りていく階段もない。落ちていくしかない」
するとハリーが笛を吹きながら、自分自身を指さした。
「君が先に行きたいのかい?本当に?どのくらい深いか分からないよ。ハーマイオニーに笛を渡して、犬を眠らせておいてもらおう」
「私も行くわ。ハリーを1人で行かせれないもの」
「わかったよ、アリアネ」
ハリーが横笛を吹くのを辞めて、ハーマイオニーに渡せばフラッフィーは直ぐに唸ってからピクピク動き始めた。
慌てたハーマイオニーが直ぐに笛を吹くと、フラッフィーはまた眠り始める。
「行こう、アリアネ」
「ええ」
一緒に穴に入り、2人で指先だけ扉にしがみついてロンの方へと視線を向けた。
「もし僕とアリアネの身に何か起きたら、ついてくるなよ。まっすぐふくろう小屋に行って、ダンブルドア宛にヘドウィグを送ってくれ。いいかい?」
「了解」
「ロン、後は宜しくね」
「じゃ、あとで会おう。できればね……。アリアネ、手をつなごう」
「うん」
二人で手を繋ぎ、扉から指を離す。
冷たくて湿った空気が私たちに纏い、そして段々と2人の身体は下へと落ちていった。
ドシンッ!!と音が鳴る。
痛さをこらえる為に目を閉じていたけれど、痛みは襲っては来なかった。
柔らかい物の上に落ちたようで、手のひらに植物のような感触が伝わる。
「痛いのを、予想していたけれど·····痛くなかったわね」
「そうだね。なんだろう、植物?とりあえずロンたち無事なのを伝えなきゃ。オーケーだよ!」
ハリーは上を見上げて叫ぶ。
「軟着陸だ。飛び降りても大丈夫だよ!」
すると、直ぐにロンが飛び降りてきて私たちの横に大の字にたって着陸した。
「これ、なんだい?」
「わかんない。何か植物らしい。落ちるショックを和らげるためにあるみたいだ。さあ、ハーマイオニー、おいでよ!」
「ハーマイオニー!大丈夫よ、降りてきて!」
遠くから聞こえていた笛の音が途絶えると、その代わりにフラッフィーの吠える声が聞こえてきた。
そして同時にハーマイオニーが落ちてくる。