第5章 二つの顔をもつ男【賢者の石】
「でも、重大なことなんです」
「ポッター。魔法省の件よりあなたの用事の方が重大だというんですか?」
「実は……先生……『賢者の石』の件なのです……」
マクゴナガル先生は、ハリーの言葉に目を見開かせると手に持っていた本をバラバラと落としてしまう。
だけどマクゴナガル先生は、本を拾おうとせずにハリーを驚愕した表情で見ていた。
「どうしてそれを……?」
「先生、僕の考えでは……いいえ、僕は知ってるんです。スネ……いや、誰かが『石』を盗もうとしています。どうしてもダンブルドア先生にお話しなくてはならないのです」
何故、私たちが賢者の石の事を知っているのかとそしてハリーの言葉を疑っているかのような目をマクゴナガル先生はしていた。
確かにこんな目をされても仕方ない……普通の生徒ならば知らないはずのことなのだから。
マクゴナガル先生は暫く、私たちを疑い混じりの目で見ていた。
だけど少ししてから、やっと言葉を口にする。
「ダンブルドア先生は、明日お帰りになります。あなたがたがどうしてあの『石』のことを知ったのかわかりませんが、安心なさい。磐石の守りですから、誰も盗むことはできません」
「でも先生……」
「先生、そうじゃないんです」
「ポッター、フリート。2度同じことは言いません」
話を聞いてくれる気配がない。
その事に少しだけ苛立ちを覚えてしまう。
「4人とも外に行きなさい。せっかくのよい天気ですよ」
それだけを言うと、マクゴナガル先生は本を拾って行ってしまった。
だけど私たちは外に出ずに、眉間に皺を寄せながら話し合う。
「今夜だ。スネイプが仕掛け扉を破るなら今夜だ。必要な事は全部わかったし、ダンブルドアも追い払ったし。スネイプが手紙を送ったんだ。ダンブルドア先生が顔を出したら、きっと魔法省じゃキョトンとするに違いない」
「でも私たちに何ができるって……」
その時、ハーマイオニーが息を飲んだ。
どうしたのだろうと、ハーマイオニーの視線を辿るかのように後ろを振り向いて驚愕する。
私たちの背後に、セブが立っていた。
彼は目を細めながら私たちを見下ろしていて、その視線に冷や汗が浮かぶのが分かる。
「やあ、こんにちは。諸君、こんな日には室内にいるもんじゃない」
やけに、今日は愛想が良い。
しかも取ってつけたような微笑みまでも浮かべている。