第5章 二つの顔をもつ男【賢者の石】
それは、ハリーも一緒らしい。
彼は何か忘れているような感じがしてならない、そうハーマイオニーたちに説明した。
「それって、試験のせいよ。私も昨日夜中に目を覚まして、変身術のノートのおさらいを始めたのよ。半分ぐらいやった時、この試験はもう終わったってことを思い出したの」
「ああ、だから夜中に何かしてたのね……」
「そうなの。自分でも驚いわ」
だけど、落ち着かない感じや胸騒ぎに何か忘れているような感じは試験のせいじゃない気がしていた。
そんな風に思いながら、ウトウトとしていればハリーが突然立ち上がる。
「……ハリー?」
「どこに行くんだい?」
「いま、気づいたことがあるんだ。すぐ、ハグリッドに会いに行かなくちゃ」
そう言うとハリーは森の方へと歩き出し、私たちも慌てて追いかけていく。
「どうして?」
ハーマイオニーはハリーに何とか追いついて、ハグリッドのところに行く理由を訊ねる。
「おかしいと思わないか?ハグリッドはドラゴンが欲しくてたまらなかった。でも、いきなり見ず知らずの人間がたまたまドラゴンの卵をポケットな入れて現れるかい?魔法界の法律で禁止されているのに、ドラゴンの卵をもってうろついている人がざらにいるかい?ハグリッドにたまたま出会ったなんて、話がうますぎると思わないか?どうしていままで気づかなかったんだろう」
「何が言いたいんだい?」
半分寝ぼけている私は、ハリーの言葉が理解出来なかった。
何かに違和感を覚えているようだけど、私は重くなっている瞼を一生懸命こすりながらも、ハリーを追いかけていく。
森を入っていけば、ハグリッドの小屋が見えた。
小屋の主であるハグリッドは、家の外にいて肘掛椅子に腰掛けながら豆のさやを剥いている。
「よう。試験は終わったかい。お茶でも飲むか?」
「うん。ありがとう」
そう答えようとしたロンを、ハリーが遮った。
「ううん。僕たち急いでるんだ。ハグリッド、聞きたいことがあるんだけど。ノーバートを賭けで手に入れた夜のこと覚えてるかい。トランプをした相手って、どんな人だった?」
「わらかんよ。マントを着たままだったしな」
「相手の顔、見ていないの!?」
ハグリッドの言葉に、私たちは絶句する。
そんな私たちの様子を見て、ハグリッドは眉を動かしながら言葉を続けた。
「そんなに珍しいこっちゃない」