第5章 二つの顔をもつ男【賢者の石】
「眠そうね、アリアネ。貴方、ココ最近ろくに寝れていないのだから少し眠ったら?」
「そうするわ……」
陽の温もりでウトウトとしてしまう。
ここ最近、眠れていないせいなのかあっという間に眠気が訪れていた。
近くの湖ではフレッドとジョージがジョーダンと日向ぼっこしている大イカの足をくすぐっているのが見えた。
それにクスッと笑いながら目を閉じる。
「もう復習しなくてもいいんだ」
ふと、目を開ければハリーは暗い表情だった。
私も人のことは言えない顔色だけど、ハリーも顔色が悪い。
「ハリー、もっと嬉しそうな顔しろよ。試験でどんなにしくじったって、結果が出るまでまだ1週間もあるんだ。いまからあれこれ考えたってしょうがないだろ」
「いったいこれはどういうことなのかわかればいいのに!ずーっと傷がうずくんだ……いままでも時々こういうことはあったけど、こんなに続くのは初めてだ」
額の傷がずっとうずくせいなのか、ハリーは苛立っているようだ。
「痛いの?ハリー」
「痛いより、うずくんだよ」
「マダム・ポンフリーのところに行った方がいいわ」
ハーマイオニーの言葉に、ハリーは首を横に振った。
「僕は病気じゃない。きっと警告なんだ……何か危険が迫っている証拠なんだ」
「ハリー、リラックスしろよ。ハーマイオニーの言う通りだ。ダンブルドアがいるかぎり、『石』は無事だよ。スネイプがフラッフィーを突破する方法を見つけたっていう証拠はないし」
ロンは暑そうにしながら目を細め、ハリーを宥めようとしていた。
「いっぺん脚を噛み切られそうになったんだから、スネイプがすぐにまた同じことをやるわけないよ。それに、ハグリッドが口を割ってダンブルドアを裏切るなんて有り得ない。そんなことが起こるくらいなら、ネビルはとっくにクィディッチ世界選手権のイングランド代表選手になってるよ。アリアネも、気にしすぎだ」
ふと、ロンは私へと視線を向けた。
「君、スネイプの事とか気にしてるんだろう?まださ、スネイプがあの人に石を渡そうとしているとは限っていないんだよ。だからそんなに思い詰めなくてもいいんだよ。それに、君とハリーはダンブルドアがいるかぎり守られるんだから」
「そうね……ありがとう、ロン」
だけど、胸騒ぎがずっと続いている。
それに何かを忘れている様な感じが、さっきからずっとあった。