第1章 ホグワーツ魔法魔術学校【賢者の石】
「きのう、少しはおもしろくしてやろうと思って、黄色に変えようとしたんだ。でも呪文が効かなかった。やって見せようか、見てて……」
ロンはがさごそとトランクを引っ掻き回す。
そしてちょっとくたびれたような形をした杖を取り出して見せる。
「一角獣(ユニコーン)のたてがみがはみ出してるけど。まあ、いいか……」
そして、スキャバーズに呪文をかけようとした時である。
またコンパートメントの扉が開いて、半泣きの男の子がまた顔を覗かせた。
でも次は女の子を連れていて、その子は既に新調のホグワーツ・ローブに着替えている。
「誰かヒキガエル見なかった?ネビルのがいなくなったの」
栗色の髪の毛がふわふわした、可愛らしい女の子はそう聞いてくる。
どうやら半泣きの男の子のヒキガエル探しを手伝っているみたい。
「見なかったって、さっきそう言ったよ」
そうロンが応えるが、女の子はその返答よりロンがやろうとしている事に興味が注がれたみたい。
「あら、魔法をかけるの?それじゃ、見せてもらうわ。座ってもいいかしら?」
「あ、じゃあ私の所座っていいわよ。ハリー、隣失礼するわね」
「ありがとう」
「いいよ、アリアネ」
「ありがとう、ハリー」
私は女の子に自分が座っていた座席を譲り、ハリーの隣に腰掛けた。
そしてロンは、隣に知らない女の子が座ったせいなのか、たじろいでいる。
「あー……いいよ」
そして咳払いをしてから、杖をスキャバーズに向けてから呪文を唱えた。
「お陽さま、雛菊、溶ろけたバター。デブで間抜けなねずみを黄色に変えよ」
杖を振るけれども、何も起きない。
スキャバーズは相変わらず眠っているし、相変わらずのねずみ色なのだから。
「その呪文、間違ってないの?」
「多分、間違ってるわね。そんな呪文聞いたことないわ、ロン」
「まあ、あんまりうまくいかなかったわね。私も練習のつもりで簡単な呪文を試したことがあるけど、みんなうまくいったわ」
「……アリアネと一緒だ」
私もあらかた、簡単な呪文をウィーズリー家で練習はしていた。
ビルやパーシーに教えてもらって、簡単な呪文とちょっとだけ難しいものも覚える事が出来た。
「私の家族に魔法族は誰もいないの。だから、手紙をもらった時、驚いたわ。でもうれしかったわ」
どうやら、この女の子はマグル生まれらしい。