第4章 禁じられた森【賢者の石】
こうして、私とハリーはマルフォイと一緒に森の中を歩くことになった。
私とハリーは会話をしていたけれど、マルフォイとは一切喋ることはない。
だけど、時折後ろを歩くマルフォイを睨みつけた。
「いいわね、マルフォイ。何かしたら間違えて私、貴方を呪文で何かしてしまうかもしれないわ。呪文をかけられたくなかったら、大人しく歩いてちょうだいね」
「わ、わかった……」
脅しはこれぐらいで良いだろう。
そう思いながら歩き出していくが、もう30分は歩き通しだった。
進む先は小枝でビッシリと覆われていて、歩くのが難しくなってきている。
「見て、アリアネ。血の滴りが濃ゆくなってる」
「本当だわ……。近くにいるのかしら……こんなにも血を流していたらきっと苦しんでるはずだわ」
気の根元の大量に落ちている血に、私は顔を歪ませてしまう。
傷つけられたユニコーンはきっと、傷が痛くて苦しくてここでのたうち回ったはず。
早く見つけてあげなきゃと、さらに歩き出した。
しばらくすれば、古木の枝がからみあう向こうに開けた平地が見えた。
「見て……」
ハリーは私とマルフォイに腕を伸ばして制止させる。
地面に純白の輝くものがあり、ゆっくりと近づけばそこにはユニコーンがいた。
だけど既にユニコーンは息絶えている。
「……可哀想に」
泣きたくなってきた。
美しい生き物はこんな暗い所でひっそりと、1人で死んでしまっているなんて。
私とハリーがユニコーンに近づく為、1歩踏み出した時だった。
ズルッという滑る様な音が聞こえてきて、私たちはその場に凍りつくように固まる。
「……音が、聞こえる」
ゆっくりと、音がした方へと視線を向ける。
すると暗がりの中から、頭をフードですっぽりと包んだ何かが獲物を漁る獣のように地面を這っているのが見えた。
そしてマントを着ている『何か』はユニコーンに近づくと、身をかがめてその血を飲み始めた。
その時である。
「ぎゃああああアアア!」
マルフォイが絶叫したのである。
ファングも釣られて絶叫するかのように吠えて、フードに包まれた何かは私とハリーを見つめた。
ユニコーンの血が、見えない口から滴り落ちている。
マントに包まれた何かは、ゆっくりと私たちに近寄ってくる。
その瞬間、ハリーは突然呻き声をあげながらその場に倒れかかった。
「ハリー!?」