第4章 禁じられた森【賢者の石】
「ああ、元気だ。なあ、ロナンにもいま聞いたんだが、最近この辺で何かおかしはものを見なかったか?実はユニコーンが傷つけられてな……おまえさん何か知らんかい?」
だけど、ベインさんも何も答えずにロナンさんの隣に立つと空を見上げていた。
「今夜は火星が明るい」
「もうそれは聞いた」
ハグリッドは不機嫌になってしまった。
もしかしてケンタウルスは人の話を聞かない生き物なんだろうかと、首を傾げる。
火星が明るいとしか言わないし、不思議な生き物だなあとベインさんとロナンさんを見つめた。
「さーて、もしお二人さんのどっちかでも何か気がついたら俺に知らせてくれ。たのむ。さあ、俺達は行こうか」
ハグリッドは不機嫌そうなまま、歩き出したので私達も追いかけるように歩き出す。
時折、肩越しに何度も振り返りながらロナンさんとベインさんを見た。
するとハグリッドはイライラしながら話し出す。
「ただの一度も、ケンタウルスからはっきりした答えをもらったためしがない。いまいましい夢想家よ。星ばかり眺めて、月より近くのものにはなんの興味も持っとらん」
「森にはケンタウルスがたくさんいるの?」
「ああ、まあまあだな……たいていやっこさんたちはあんまり他の奴とは接することがない。だが俺が何か聞きたい時は、ちゃんと現れるという親切さはある。連中は深い。心がな。ケンタウルス……いろんなことを知っとるが、あまり教えちゃくれん」
本の内容にも似たことが書いてあった。
ケンタウルスは夢想家であって、星や月以外のことには興味がないと。
本当にその通りなんだなあと、私はまたロナンさんとベインさんがいた方へと視線を向けた。
「さっき聞いた音、ケンタウルスだったのかな?」
ハリーの問に、ハグリッドはかぶりを振った。
「あれが蹄の音に聞こえたかね?いーや、俺にはわかる。ユニコーンを殺したヤツの物音だ……あんな音はいままで聞いたことがない」
そして私たちは更に深く、真っ暗な茂みの中に進んでいく。
だけど時折、私は何度もハリーと共に後ろを振り向いたりと神経質になりそうな気がしていた。
(なんだか、誰かに見られているような……見張られてるいるような気がする)
気の所為かもしれないと思ったけれど、ねっとりとしたそんな雰囲気が漂っていたのだ。