第4章 禁じられた森【賢者の石】
赤い髪に赤い髭、腰からは艶々としている栗毛の赤みがかった馬のような下半身。
「……あれは」
本で見たことある姿。
それはケンタウルスという、不思議な生き物だった。
初めて見るケンタウルスに私は目を見開かせて、口を少しだけ開ける。
「ああ、君か、ロナン。元気かね?」
ハグリッドは安心したように息を吐くと、ケンタウルスに近づいて握手をする。
「こんばんは、ハグリッド。私を撃とうとしたんですか?」
「ロナン、用心にこしたことはない。なんか悪いもんがこの森をうろついているんでな。ところで、この3人はハリー・ポッターとアリアネ・イリアス・フリートとハーマイオニー・グレンジャーだ。学校の生徒でな。3人とも、こちらはロナンだよ。ケンタウルスだ」
「気がついていたわ」
ハーマイオニーは怖いのか、消え入るような声で言う。
だけど私は会ってみたかったケンタウルに会えて、目を輝かせながら挨拶をした。
「こんばんは、ロナンさん」
「こんばんは。生徒さんだね?学校ではたくさん勉強してるかね?」
「えーと……」
「その……」
「少しは」
「少し。そう。それはよかった」
ロナンさんは凄く優しい声音だった。
そしてフーッと息を吐くと、首を振りながら空を見上げている。
「今夜は火星がとても明るい」
「ああ。なあ、ロナンよ。君に会えてよかった。ユニコーンが、しかも怪我をしたヤツがおるんだ……なんか見かけんかったか?」
ロナンさんはハグリッドの言葉に、すぐには答えずに空を見上げながら息を吐いている。
「いつでも罪もない者が真っ先に犠牲になる。大昔からずっとそうだった。そしていまもなお……」
「あぁ。だがロナン、何か見なかったか?いつもと違う何かを?」
「今夜は火星が明るい。いつもと違う明るさだ」
会話が噛み合っていない。
私たちはハグリッドがイライラしてきているのを見ながらも、またロナンさんを見る。
「あぁ、だか俺が聞きたいのは火星より、もうちょいと自分に近い方のことだが。そうか、君は奇妙なものは何も気づかなかったんだな?」
「森は多くの秘密を覆い隠す」
すると、ロナンさんの背後で何かが動いた。
ハグリッドはそれに気付いて、また弓を構えたけれど現れたのはロナンさんとは別のケンタウルス。
「やあ、ベイン。元気かね?」
「こんばんは。ハグリッド、あなたも元気ですか?」