第4章 禁じられた森【賢者の石】
いつもなら『しないわよ!』と言うけれど……なんて思いながら私は少しだけ爪先立ちをすると、フレッドの頬にキスをした。
「……へ?」
唇を離してから、フレッドを見ると目を丸くさせていて固まってしまっている。
それがちょっと面白くて笑っていると、フレッドがキスした頬に手を当てていた。
「本当にありがとう、元気づけてくれて。私、もう行くわね。ハーマイオニーたちが待ってるから」
「あ、ああ……うん」
「本当にありがとう、フレッド」
背中を向けて歩き出したは私は知らなかった。
あの後、フレッドがその場にしゃがみこんでいたことやジョージが見ていたことを。
「良かったな、兄弟。アリアネに頬にキスしてもらえて。でも唇が良かっただろう?」
「頬でいいよ、もう……ずるいよな、アリアネって」
「仕方ない、仕方ない。顔が真っ赤な兄弟」
「やめてくれ、兄弟」
あれから、私たちは余計な事はしないでおこうと誓っていた。
ハリーとロン、ハーマイオニーと共に他の寮生から離れて、夜遅くまで勉強した。
複雑な薬の調合を覚えたり、妖精の魔法や呪いの魔法の呪文を暗記したり、魔法界の発見や小鬼の反乱の年号を覚えたり……。
試験まであと1週間になった頃。
その日の午後、私とハリーは図書館から帰る途中で、教室から誰かのすすり泣く声が聞こえてきたのに気がついた。
2人で顔を見合せてから近寄れば、声の主はクィレル。
「ダメです……ダメ……もうどうぞお許しを……」
誰かにまるで脅されているかのように、泣いている。
「わかりました……わかりましたよ……」
すると、クィレルが曲がったターバンを直しながら教室から出てきた。
だけど私とハリーには気づかなかったよう。
「泣いていたわね、クィレル……。どうしたのかしら?」
「教室に誰かいるのかな……」
そう思いながら、教室を覗くけれど誰もいない。
だけど反対側のドアが少しだけ開いているのに気がついた。
「あのドアから出ていったのはスネイプだ。絶対にそうだよ、そうに違いない。賢者の石を1ダース賭けてもいいよ」
「そんなものに賢者の石を賭けないで、ハリー」
そして私たちは図書館に戻った。
ちょうど、ハーマイオニーとロンが天文学のテストをしていてハリーはさっきの事を2人に話した。