第4章 禁じられた森【賢者の石】
「ポッター、ありがとうよ。借りができたぜ!」
スリザリン寮生は、ハリーが通る度にそうはやし立てていた。
その度に私は杖を取りだして、脅してから黙らせていたけれど。
「ハリー、気にしなくていいわよ。私が言うのもあれだけれど……」
「そうだよ。数週間もすれば、みんな忘れるよ。フレッドやジョージなんか、ここに入寮してからずーっと点を引かれっぱなしさ。それでもみんなに好かれてるよ」
「だけど1回で200点も引かれたりはしなかったろう?」
「ウン……それはそうだけど」
ハリーも辛く当たられていたけれど、私とハーマイオニーとネビルもかなり辛い目にあった。
すぐに私たちのせいで点数を引かれたと噂が流れて、私たちに声をかけようとする人達はいなくなった。
本当に馬鹿な事をしてしまった。
自分でもわかっているけれど、ノーバートをあのままにも出来なかったし……。
なんて思いながら、トボトボと1人で廊下を歩いている時だ。
「お姫様、どうしたんだ?そんなに落ち込んで」
「……フレッドで、いいのかしら?貴方は」
双子のどちらかが、私の顔を覗き込む。
「そうだよ、フレッドさ。まさかアリアネが罰則を受けるだなんて」
「笑いに来たの……?」
私はかなり落ち込んでいた。
だから、いつもの様に言い返せずにいて下を俯く。
「いいや、逆に笑わせてあげようと思ってね」
「え?」
「ほら!顔を上げて上げて!!」
フレッドは私の頬を両手で包むと、上に向かせる。
視界には笑顔を浮かべたフレッドの顔でいっぱいになっていた。
「はい、あーん」
「んぐっ!?」
そして突然、口に何かを突っ込まれる。
驚いた私が目を見開かせていれば、フレッドは楽しそうにしていた。
何を入れられたんだろう。
そう思って口を動かしていれば、コロンと何かが口の中で転がる。
「飴……?糖蜜パイの味がする」
「糖蜜飴さ。美味しいだろ?」
「うん、凄く美味しい……」
「甘いの食べたら、いつもアリアネは笑顔になるだろう?甘いのを食べたら幸せだって」
確かにそうだ。
あれだけ落ち込んでいたのに、甘いのを口に入れた瞬間凄く幸せになった。
そしてつい、笑みが零れてしまう。
「やっぱり、君は笑顔じゃないとな!」
「……ありがとう、フレッド」
「どういたしまして。お礼はキスでいいよ、なーんてね」