第4章 禁じられた森【賢者の石】
「そう、それなら一安心だ」
話が一段落してから、私たちは部屋の暑さに耐えられなくなってきていた。
だって物凄く暑いんですもの……汗が滲み出ていて喉が渇いてくるぐらいに。
「ねえ、ハグリッド……凄く暑いわ」
「そうだよ。ハグリッド、窓を開けてもいい?茹だっちゃうよ」
「悪いな。それはできん」
何故、駄目なんだろう。
そう思っていれば、ハリーが何かを見つけた。
「ハグリッド、あれ何?」
ハリーが指さす方には暖炉がある。
その炎の真ん中、やかんの下には大きな黒い卵があるのに気がつく。
何か言われなくても、私たちはすぐにそれが何の卵が気が付いた。
「えーと、あれは……その……」
ハリーの言葉に、ハグリッドが焦っている。
「ハグリッド、どこで手に入れたの?凄く高かったろう」
「ねえ、ハグリッド、教えてちょうだい」
ロンはそう言いながら火のそばに屈むと、卵を見ている。
そして私はハグリッドに詰め寄りながら、再度『どこで手に入れたの?』と聞いた。
「賭けに勝ったんだ。昨日の晩、村まで行って、ちょっと酒を飲んで、知らないやつとトランプをしてな。はっきり言えば、そいつは厄介払いして喜んでおったな」
「だから、持って帰ってきたの!?ハグリッド、貴方、この卵が何か分かっているのでしょう?違法なのよ!」
「わ、わかっておる、大声を出さないでくれアリアネ」
「だけど、もし卵が孵ったらどうするつもりなの?」
私が深く深くため息を吐いていれば、ハーマイオニーがそう訊ねる。
するとハグリッドは枕の下から大きくて分厚い本を取り出した。
「図書館から借りたんだ。『趣味と実益を兼ねたドラゴンの育て方』。もちろん、ちいと古いが、何でも書いてある。母龍が息を吹きかけるように卵は火の中に置け。なぁ?それからっと……孵った時はブランデーと鶏の血を混ぜて三十分ごとにバケツ一杯飲ませろとか。それとここを見てみろや。卵の見分け方、俺のはノルウェー・リッジバックという種類らしい。こいつが珍しいやつでな」
本気でハグリッドは卵を孵すつもりなんだ。
そう思い、私とハーマイオニーは大きくため息をついた。
「ハグリッド、この家は木の家なのよ」
ハーマイオニーの言葉を聞きながらも、ハグリッドはルンルンと鼻歌まじりで火をくべていた。
「そうだ、アリアネ」
「なあに、ハグリッド……」