第3章 不思議なみぞの鏡【賢者の石】
その途端であった。
ミセス・ノリスの光る目がドアの向こうから現れて、その姿を見た瞬間私たちは声を潜める。
もし声を出したり音がしただけで、ミセス・ノリスにバレるかもしれないと思いながら緊張が漂う。
暫くすれば、ミセス・ノリスはくるりと方向を変えると行ってしまった。
その事に安堵して私たちは息を吐き出す。
「まだ安心はできない。フィルチのところに行ったかもしれない。僕たちの声が聞こえたに違いないよ。さあ」
ロンは私とハリーを部屋から引っ張りだし、私たちは寮へと戻ったのであった。
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次の朝。
雪はまだ溶けてはいなくて、外では雪合戦をしている生徒たちの姿が窓から見える。
そんな姿を見ながら、私は昨夜の事を思い出していた。
鏡には、私の両親が映っていた。
死んでしまった、二度と会えない、たった一年しか一緒に居ることが出来なかった両親。
(もう一度、あの鏡をみたい·····)
なんて思っていれば、ロンが私とハリーに声をかけてきた。
「ハリー、アリアネ。チェスしないか?」
「私はいいわ·····」
「しない」
「下におりて、ハグリッドのところに行かないか?」
「私は、行かないわ·····」
「うぅん·····君が行けば·····」
私とハリーはそんな返事をする。
「ハリー、アリアネ。あの鏡のことを考えているだろう。今夜は行かない方がいいよ」
ロンにまさか思っていることを気付かれるとは思わず、少しだけ驚いてしまった。
そしてハリーが不思議そうにロンに訪ねる。
「どうして?」
「わかんないけど、なんだかあの鏡のこと、悪い予感がするんだ。君はすいぶん危機一髪の目に会ったじゃないか。フィルチもスネイプもミセス・ノリスもうろうろしているよ。連中に君が見えないからって安心はできないよ。君にぶつかったらどうなる?もし君が何かをひっくり返したら?アリアネも、危険なことしたら駄目だ。君が危険な目にあえば·····」
「ハーマイオニーみたいなこと言うね」
「ええ。ロン、貴方、ハーマイオニーみたいだわ」
「本当に心配しているんだよ。ハリー、アリアネ、行っちゃだめだよ」
だけど、私とハリーは鏡の所に行きたいとしか思わなかった。
だってもう一度、何度でも両親に会いたかったから·····。